憑依

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「やっぱり何も知らないあんたに、犯人グループが盗品を渡したのかな? それにしてもそいつらは何で隠し場所を教えるようなことをしたんだろう? まあ、でも、この家で焼死した奥さんの名前を騙ったということは間違いなさそうだな。もしかしたら、隠し場所にするために、わざとそいつらが火をつけたのかもしれないな」
また一人、地下室に降りてきた男が早口に伝達した。
「警部補、この家の当主、佐々木伸善は例の博物館の学芸員でした。二条家関係も手掛けていたそうです。それから、佐々木は忙しいときには小物の類いは、自宅に持ち帰って修理することがあったみたいです。どうも、付属品のようなものだと、割と簡単に持ち帰れるみたいなんですね。展示のときにそろってれば問題はないわけですから。どこの博物館でもやっているかはわからないんですけど、ここの博物館はかなりルーズだったみたいですね。消えた時は、二条家の収蔵品は展示されていない時期で、倉庫にいわば山積み状態になっていたみたいです。佐々木は凝り性だから、一挙に自宅に持っていき、休日を利用して、徹底的に修理していたみたいですね。それであの火事が起きたから、実は博物館側は慌てたのです。学芸員が自宅に持ち帰った収蔵品が火事で焼失したとしたら、博物館の責任問題になりますからね。困った館長は盗難届を警察に提出した。館長は、火事で焼失したと思っていたから、永久に出てくることはないと思い安心していた。そうしたら、石帯を持って警察に出頭した者が出てきたので、計画が狂ってしまったんですよ。まるでお化けでも見るように石帯を見つめていました」
本庁の警部補は詳細な報告をしてくれた部下をねぎらった。そして、つぶやいた。
「お化けか。本当だな。二条為基の幽霊あたりが、今回の事件の犯人かもな。ま、しかし、そういう話なら、捜査は打ち切ってもいいだろう。笄は出てこなかったが、これだけは、地下室から自室あたりに運びこんで、手入れしているところで燃えちゃったのかもしれないな。とにかく、ふざけた話だよな。博物館がいらないのなら、俺達でわけちゃうか。みんな新車に買い替えられるんじゃないのか? よお、大将、よかったな。今回はこんな程度で済んだけど、これからは女には十分気をつけた方がいいぜ」
警部補は力を込めて豊雄の背中をたたいた。どうやら豊雄は許されたようだった。和やかな雰囲気で地下室から上がって来ると、ゲストルームに若い女が二人立っていた。真名美と詩絵だった。真名美は何も言わずほほえんでいた。豊雄は目を見開いて立ちつくした。
警部補が真名美に話しかけた。
「あなたはいったい誰ですか? ここは立ち入り禁止になっているんだから、あっちへ行きなさい」
また一人、地下室に降りてきた男が早口に伝達した。
「警部補、この家の当主、佐々木伸善は例の博物館の学芸員でした。二条家関係も手掛けていたそうです。それから、佐々木は忙しいときには小物の類いは、自宅に持ち帰って修理することがあったみたいです。どうも、付属品のようなものだと、割と簡単に持ち帰れるみたいなんですね。展示のときにそろってれば問題はないわけですから。どこの博物館でもやっているかはわからないんですけど、ここの博物館はかなりルーズだったみたいですね。消えた時は、二条家の収蔵品は展示されていない時期で、倉庫にいわば山積み状態になっていたみたいです。佐々木は凝り性だから、一挙に自宅に持っていき、休日を利用して、徹底的に修理していたみたいですね。それであの火事が起きたから、実は博物館側は慌てたのです。学芸員が自宅に持ち帰った収蔵品が火事で焼失したとしたら、博物館の責任問題になりますからね。困った館長は盗難届を警察に提出した。館長は、火事で焼失したと思っていたから、永久に出てくることはないと思い安心していた。そうしたら、石帯を持って警察に出頭した者が出てきたので、計画が狂ってしまったんですよ。まるでお化けでも見るように石帯を見つめていました」
本庁の警部補は詳細な報告をしてくれた部下をねぎらった。そして、つぶやいた。
「お化けか。本当だな。二条為基の幽霊あたりが、今回の事件の犯人かもな。ま、しかし、そういう話なら、捜査は打ち切ってもいいだろう。笄は出てこなかったが、これだけは、地下室から自室あたりに運びこんで、手入れしているところで燃えちゃったのかもしれないな。とにかく、ふざけた話だよな。博物館がいらないのなら、俺達でわけちゃうか。みんな新車に買い替えられるんじゃないのか? よお、大将、よかったな。今回はこんな程度で済んだけど、これからは女には十分気をつけた方がいいぜ」
警部補は力を込めて豊雄の背中をたたいた。どうやら豊雄は許されたようだった。和やかな雰囲気で地下室から上がって来ると、ゲストルームに若い女が二人立っていた。真名美と詩絵だった。真名美は何も言わずほほえんでいた。豊雄は目を見開いて立ちつくした。
警部補が真名美に話しかけた。
「あなたはいったい誰ですか? ここは立ち入り禁止になっているんだから、あっちへ行きなさい」