烏賊がな
-中里探偵事務所-

探偵
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場面45

どうせ、事件のけりがつけば、はっきりしてくるのさ。いつかは、あらゆる謎がパタパタと合って筋がとおっちまうんだ。しかも、こっちの思わくとは全然違う形でね。
エド・マクベイン
『通り魔』』

 山脇の愛車、シルバーのヴォクシーが駐車場に入ると、大塚優果が近づいた。
 山脇は駐車枠の中にヴォクシーをとめ、外へ降りると、優果からダンボール箱を受け取った。
「どうも、ご苦労様でした」
「いいえ、それではよろしくお願いします
 優果は両手をそろえて、ペコリとお辞儀をした。そして、コーラル・ピンクのアクアに乗り、駐車場から去った。
 アクアが見えなくなると、山脇は段ボール箱をヴォクシーの後部座席に置き、その代わりに本屋の紙袋を持って、店の方に歩いていった。
 本屋の紙袋の中には、譲の言葉どおり、二枚のCDが入っていた。どちらもクラシックだった。一つはショパンで、もう一つはワーグナーだった。
 山脇はCDをカウンターで出した。三十代後半に見える店員が対応した。特に不審な点はなかった。CDの代価として、小銭を受け取ると、打ち合わせどおり、山脇はぼそっとつぶやいた。店員は不思議そうな顔をして、聞き返してきた。山脇は、後日に詳細な打ち合わせに来ますとだけ言って、出口に向かった。店員は追ってこなかった。動く気配もなかった。「脈なしかな」と山脇は思った
 外へ出ると、ヴォクシーの横にアウディがとまっていた。山脇が近づくと、アウディから譲が出てきた。譲はダンボール箱の中を見たがった。山脇はダンボール箱を開けた。譲は中身を調べた。発泡スチロールの小片二つを接着剤で合わせて一つの塊に見せかけたものが出てきた。それを割ると、小さなグレーの機器が出てきた。
「GPSですかね」
「そのようですね」
 譲はGPSをスーパーのレジ袋に入れた。
「どうするんですか」
「これはこの店にある方がいいでしょう」
 そう言うと、譲は店舗の裏に向かった。山脇もついて来ようとしたが、譲が制止した。
「店から誰かが出てくるかもしれません。山脇刑事はここから出たほうがいいでしょう」
 山脇は、その言葉に同意した。そして、ヴォクシーに乗って、駐車場から立ち去った。
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 烏賊がな-中里探偵事務所-
◆ 執筆年 2017年9月