烏賊がな
-中里探偵事務所-

探偵
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 直後に、店から二人の男が出てきた。一人はカウンターにいた店員で、もう一人は、それより年かさの男だった。
 譲はもう裏にいた。
 がらくたの山があった。自転車やオートバイ、食器棚、パイプイス、ストーブ。ありとあらゆるものが転がっていた。譲は、薄汚れた植木鉢の中にレジ袋を突っ込んだ。成功と言ってよさそうだった。念のためその上から手近にあった子供用の靴を突っ込んでみた。二、三歩歩いてから、また、振り返った。今度は大成功に思えた。この植木鉢の中が気になって、子供用の靴を外へ出してみようと考える者は、全くいなそうだった。
 譲は駐車場に引き返した。二人の男は、車道の方まで出て、店から立ち去った車を探そうとしていた。それが徒労だとわかったのか、彼らはあきらめて、店に戻りかけた。譲は、彼らが振り向く前に、店の中に入った。
 陳列棚に並んでいるパソコンを見ていると、二人が入ってきた。店の中には他に二人の男の客が物色していた。譲は本が並んでいるコーナーに移動した。古い本を何気なく手に取ると、旧字体で書かれていた。彼は開いたページが何となく気になった。しかし、何が気になるのか、わからなかった。彼はこの本を買って、このページをじっくり見てみたくなった。
 レジに持っていくと三十代後半の店員が対応した。金を受け取り、紙袋に入れた本とレシートを譲に渡した。譲は紙袋を持って、店を出た。
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 烏賊がな-中里探偵事務所-
◆ 執筆年 2017年9月