烏賊がな
-中里探偵事務所-
66
「田部井君、君が謝る必要はないよ」くるっと皆川に顔を向けた。「皆川君、林の顔をぼろぞうきんにしてやれ」
「警部補、いいんですか」
「取り押さえるのに、激しく抵抗したから仕方なかった。そうだな。そのために君を呼んだのだ」
高柳は片目を閉じて開いた。
「わかりました」
皆川が部屋を出ると、高柳は亜沙子に言った。
「兵庫県警が協力してくれるそうだ」
「えっ、じゃあ、もう中里探偵事務所には手を引くようにと言えますね」
「まあ、それが一番なんだが、話はちょっと複雑なんだよ」
「どういうことですか」
「例のサイトにログインできないとなると、埒があかないからね。兵庫県警も中里探偵事務所の行動に興味を持っているんだよ。なんでも、調査員が神戸大学の学生と知り合いになったそうじゃないか」
「彼女はだまされているんですよ」
「これ以上深入りしないように言えば、納得しそうかね」
「そこはなんとも」
「弱ったな」コーヒーをすする。「だまされているという証拠があるといいんだがね」
亜沙子は山脇を見た。山脇はパソコンのキーを叩いていた。
「ねえ、山脇さん、根本は大塚さんにCDラジカセを渡したんでしょ。何か変わったところはなかったの。GPSが埋め込んであったとか」
山脇は眼鏡のフレームを指で押し上げた。
「いや、特に変わったところはなかったですね。中里探偵事務所の所長ともよく確認したのですが、GPSも発見できませんでした」
「本当によく探したの」
「はい、探しました。なんならもう一度店に行って、もしまだCDラジカセが売られてなかったら買い戻してきましょうか」
「それはやる価値があるな。早速頼むよ」
そう言って、高柳警部補はコーヒーの入っていないマグカップをすすった。
「警部補、いいんですか」
「取り押さえるのに、激しく抵抗したから仕方なかった。そうだな。そのために君を呼んだのだ」
高柳は片目を閉じて開いた。
「わかりました」
皆川が部屋を出ると、高柳は亜沙子に言った。
「兵庫県警が協力してくれるそうだ」
「えっ、じゃあ、もう中里探偵事務所には手を引くようにと言えますね」
「まあ、それが一番なんだが、話はちょっと複雑なんだよ」
「どういうことですか」
「例のサイトにログインできないとなると、埒があかないからね。兵庫県警も中里探偵事務所の行動に興味を持っているんだよ。なんでも、調査員が神戸大学の学生と知り合いになったそうじゃないか」
「彼女はだまされているんですよ」
「これ以上深入りしないように言えば、納得しそうかね」
「そこはなんとも」
「弱ったな」コーヒーをすする。「だまされているという証拠があるといいんだがね」
亜沙子は山脇を見た。山脇はパソコンのキーを叩いていた。
「ねえ、山脇さん、根本は大塚さんにCDラジカセを渡したんでしょ。何か変わったところはなかったの。GPSが埋め込んであったとか」
山脇は眼鏡のフレームを指で押し上げた。
「いや、特に変わったところはなかったですね。中里探偵事務所の所長ともよく確認したのですが、GPSも発見できませんでした」
「本当によく探したの」
「はい、探しました。なんならもう一度店に行って、もしまだCDラジカセが売られてなかったら買い戻してきましょうか」
「それはやる価値があるな。早速頼むよ」
そう言って、高柳警部補はコーヒーの入っていないマグカップをすすった。