世界の街角から
(アメリカ編)

アメリカ旅行
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ラスベガス①

 今までに四カ国を旅行した。インド(一九九三)、イギリス(二〇〇五)、アメリカ(二〇〇八)、フランス(二〇一四)、全て8月の旅であった。一番ロマンティックなのはインドであった。一番美しいのはイギリス。一番エレガントな国はやはりフランス。そして、一番面白かったのがアメリカであった。
 アメリカの目的地はニューヨークでもロサンゼルスでもなく、ラスベガスとグランドキャニオンであった。ラスベガスはとにかく楽しい街だった。グランドキャニオンや西部劇のロケが行われた絶景スポットもワイルドでよかった。アメリカは大らかでさばさばしていて、ヨーロッパにはないよさがある。今まで訪れた国のなかから一つ選んでもう一度行くことができるとしたら、私はきっとアメリカを選ぶだろう。そんなアメリカ旅行についてこれから書いていこうと思う。

 第1日目 2008年8月10日(日)
 JTBの「アメリカ西部大自然エクスプレス」というツアーが始まる。
 成田を夕方離陸し、ロサンゼルスに昼過ぎに到着する。飛行機を乗り継ぎ、ラスベガスには夕刻に到着する。ラスベガスは沙漠の中に作られた街だ。上空から見ると、周囲はすべて沙漠。ラスベガスだけ、緑を点在させている。文字どおり点在だ。沙漠のオアシスでは、水で潤った範囲しか、緑は繁らない。
 高度が低くなった。突如として巨大建造物群が目に入る。ピラミッド、エッフェル塔、自由の女神像……。その上空を瞬時に通過し、マッカラン国際空港に着陸した。
 空港から出ると、巨大ホテル群である。
 ラスベガスでは、ホテルごとにテーマがある。
 古代エジプトをモチーフにした「ルクソール・ホテル」。ここには高さ106メートルのピラミッドがある。ギザのピラミッドが138メートルだから、かなり大きい。
 パリをモチーフにした「パリス」には、エッフェル塔がある。実物の半分の高さである。
 ニューヨークをモチーフにした「ニューヨーク・ニューヨーク」。ここには、自由の女神やエンパイアステートビルディングなど、マンハッタンを模した、巨大なイミテーションがある。
 我々ツアー一行の宿泊するホテルは、「モンテカルロ」。もちろん、そのモチーフはモナコのモンテカルロである。ヨーロッパ風の装飾が至る所にある、エレガントなホテルであった。そして、客室は、なんと全室スイート。もっとも、これは「モンテカルロ」に限ったことではない。ラスベガスのホテルはどこでも、全室スイートなのだ。ゴージャスな部屋に満足してもらい、アトラクションやカジノでたっぷりお金を落としてもらおうという意図なのである。部屋はとても広く、きれいで豪華である。だが、ミニバー(小さな冷蔵庫)を置いていない。これも経営方針なのだ。つまり、部屋にいてもつまらないから、遊びに出かけようという気持ちにさせようということである。
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 世界の街角から(アメリカ編)
◆ 執筆年 2020年1月10日
◆ 群馬県立太田高等学校『図書館だより』の「閑話 世界の街角」に 2017年9月から2020年1月まで連載した紀行文である。
 ただし2019年10月から2020年1月までは諸事情により図書館のコーナー掲示となった。