世界の街角から
(アメリカ編)

6
ラスベガス⑥
フーターズ・ガールにお願いして、一緒に写真を撮ると、外へ出た。そのあと、MGMグランド名物のライオンを見にいった。ホテル前の金のライオン像ではなく、ホテル内の本物のライオンである。ガラス張りの巨大な飼育室にライオンが寝そべっていた。その横にTシャツの男性が立っていた。私は男性を心配した。ライオンはけだるそうに寝そべっているだけだった。ジャングルでワニも見た。剥製のワニがものすごいスピードで突進してくるので、スリルがあった。妻の母親が、「ラスベガスに来たのだから、ちょっとカジノで遊ばない!」と言い出した。日本ではカジノは違法だが、海外でカジノをするのは違法ではないそうだ。後学のため、ニューヨーク・ニューヨークのカジノで百ドルだけ遊んでみることになった。こんなこともあろうと思い、インターネットでカジノ必勝法というのを調べておいた。これは本当に必勝法であった。しかし、儲かる方法ではなかった。元手を減らさずに帰れるよ、という程度のものである。この方法については、私は、拙作『憑依』に書いたことがあるので、甚だ恐縮だが、それをしばらく引用してみたい。
「どこにどう置けばええん? うちもやってみたい」
「基本は、赤と黒なのよ」富子が優子の横にきて、説明しだした。「それだと、二回に一回の確率で勝てるの。配当は二倍だから、あまりもうからないけどね」
優子は富子のしなやかな腕にしがみついた。
「富子はん、よく知っとるのね」上目遣いで富子を見る。〈中略〉
そして、富子のほうを向き、ルーレットのやり方について説明を続けてくれるようせがんだ。
富子は今度は、色ではなく数字に賭ける方法を教えた。
「数字が全部で36あるでしょ。奇数か偶数に賭けると、配当は二倍。赤か黒に賭けるのと同じよね。それから、36の数字を前半と後半に分けて、前半、つまり1から18のほうに賭けるか、それとも後半のほうに賭けるか、というのもあるわ。もしも前半に賭けたとして、たとえば12にとまれば勝ち、というわけね。これも、確率は二分の一だから、配当は、赤黒、奇数偶数と同じ二倍。あとは、これと似ているけど、1から12を上、13から24を中、25から36を下に分けて、上中下のどれかに賭けるというのもあるわ。これだと配当は高くなって、三倍よ」
富子は、テーブルと呼ばれる、数字や文字が並んだ緑色の台を、その都度指で示しながら、優子に説明した。〈中略〉テーブルには、数字の書かれたマス目が、左から、1、2、3と、横に並び、その下の段に、同じように、4、5、6、順次、36まで整然と記されている。1から縦に見ると、1、4、7、……34と、数字が十二個並んでいる。十二掛ける三で、三十六。
「ね。だから、縦一列に賭けると、上中下と同じで、三倍の配当になるのよ」
「ふうん。なんかわかってきた」