すいす物語

すいす物語
prev

45

  二〇二五年九月

 山梨県は、水素に関して興味深い取り組みをしている。水の電気分解で水素を製造するやまなしモデルP2Gによって、水素サプライチェ―ンを構築しようとしている。住友ゴムで稼働したことは前回紹介したが、UCCやサントリー、東京都なども、P2Gの導入を予定している。そのうちに、P2Gでつくった水素を熱源に焙煎されたコーヒーを飲めるかもしれない。
 今回の関係ある歌は、いしだあゆみの『あなたならどうする』。一九七〇年、なかにし礼作詞、筒美京平作曲。山口百恵の『春風のいたずら』。一九七四年、千家和也作詞、都倉俊一作曲、馬飼野俊一編曲。
 今回の共通点は、歌詞の中に紙くずという言葉がでてくるというそれだけのことである。
 しかし、流行歌の歌詞に紙くずという言葉が使われるということ自体がとても珍しいという気がして、取り上げてみた。いまのところ、この二曲以外には、みつけられていない。
 では、『あなたならどうする』からみてみよう。
 
 嫌われてしまったの 愛する人に
 捨てられてしまったの 紙クズみたいに
 
 こちらは、実際の紙くずではなく、恋人に簡単に捨てられたことの比喩として使われている。
 
 では、『春風のいたずら』をみてみよう。
 
 女の子の 淋しさを
 少しも察してくれないの
 紙クズ飛ばして 風が吹く
 寒いわ 寒いわ 寒いわ
 こんな時こそ あなたに居てほしい
 
 こちらは、実際の紙くずが風で飛ばされているのである。
 どちらかというと、実際の紙くずが風に飛ばされるという情景の方が、歌に描かれるものとしては、変わっているであろう。
 この『春風のいたずら』あたりの山口百恵は、まだ自分らしさをださずに、芸能プロダクションの指示に従って、女の子らしい歌い方といったらいいのだろうか、とにかくいじらしい感じの声をだしていたように思う。
 それは、歌手としてデビューした女の子が、だいたいはじめは、もちろん、それぞれの歌手によって個性の違いはあるが、それでも、みんな、初々しさのようなものを持っているが、そんなものがまだまだあった時期である。
 そういう共通性があるせいかもしれないが、『春風のいたずら』の、特に、「寒いわ 寒いわ 寒いわ」のあとの、「こんな時こそ」の「こそ」の歌い方が、たとえば、『真っ赤な女の子』を歌っているあたりの小泉今日子の歌い方に、とても近い気がするのだが、それは気のせいだろうか。もう少し細かくいうと、「こんな時こそ」の「こ」と、「真っ赤な女の子」の「子」が、とても似ているのである。
 『青い果実』、『禁じられた遊び』、『春風のいたずら』、『冬の色』、『湖の決心』あたりの山口百恵の歌い方が好きな人は、『私の16才』、『真っ赤な女の子』、『半分少女』、『ヤマトナデシコ七変化』、『迷宮のアンドローラ』あたりの小泉今日子に心地よさを感じるかもしれない。(2025/5/11)
next

【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 すいす物語
◆ 執筆年 2022年2月5日~