すいす物語

すいす物語
prev

46

  二〇二五年十月

 トクヤマがホンダと三菱商事と燃料電池を使った実証実験を行うということだ。苛性ソーダの製造時に発生する水素をホンダの燃料電池に送り、発電した電気を三菱商事のデータセンターに送るというもの。AIや自動運転の普及に伴いデータセンターの需要拡大が見込まれるので、それに対応しようという計画だそうだ。
 今回の関係ある歌は、森山加代子の『白い蝶のサンバ』。一九七〇年、阿久悠作詞、井上かつお作曲。チェリッシュの『てんとう虫のサンバ』。一九七三年、さいとう大三作詞、馬飼野俊一作曲。
 今回の共通点は、歌詞の中に昆虫とサンバという言葉がでてくるというそれだけのことである。
 しかし、昆虫とサンバの組み合わせを持つ歌というものは、そうはないだろう。したがって、この二曲になんらかの関係があると考えるのは、きわめて自然なことのように思われる。
 この共通性はどのように実現したのかについて説明しようと思うが、その前にこの共通性が感じられる箇所を簡単にみてみよう。
 
 あなたに 抱かれて
 わたしは 蝶になる
 ふるえる羽 はげしい 恋に灼く
 二度とは空に 帰れない 夜に泣く
 
 実は歌詞には白い蝶であることがはっきり書かれていない。サンバという言葉もないが、この箇所はいちばんそれがわかるところである。
 
 では、『てんとう虫のサンバ』をみてみよう。
 
 赤 青 黄色の衣装をつけた
 てんとう虫が しゃしゃり出て
 サンバにあわせて 踊りだす
 
 こちらは、非常に直接的である。
 それでは共通性について簡単に説明してみたい。
 その前にソルティー・シュガ―というフォークグループに触れておきたい。ソルティー・シュガーは、一九六九年~一九七一年に活動したグループで、その最大のヒット曲は、『走れコウタロー』である。コウタローは、のちに『岬めぐり』でヒットした山本コウタローのことで、彼もソルティー・シュガーのメンバーであった。解散後には、メンバーの高橋隆がチェリッシュのアルバム制作に関わっていた。彼が、『白い蝶のサンバ』を意識していたことが、『てんとう虫のサンバ』誕生に大きく関わったようである。
 個人的な話になるが、『てんとう虫のサンバ』は、小さなときに、頻繁にテレビで触れた記憶がある。チェリッシュは、松崎好孝と松崎悦子の夫婦デュオであるが、松崎悦子の印象の方が圧倒的に強い。ただ『てんとう虫のサンバ』のとき、二人はまだ結婚していなくて、松崎悦子ではなく松井悦子で、エっちゃんと呼ばれていた。そのエっちゃんの高くて明るい声が『てんとう虫のサンバ』にぴったりである。
 『白い蝶のサンバ』の方は、まだ物心のつかない時期でもあったためか、ほとんどテレビなどで触れた記憶がない。割と最近CDなどでこの時代の曲を聴くようになってから、知った曲である。ただこれは阿久悠の初期の大ヒット曲であり、七〇年代を予感させるものといっていいだろう。(2025/8/3)
next

【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 すいす物語
◆ 執筆年 2022年2月5日~