すいす物語

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  二〇二五年十二月

 浪江町というと東日本大震災で被害が大きく、人口も少なくなってしまったところだが、現在は水素社会実現のため町ぐるみで大きなプロジェクトを立ち上げたようだ。世界最大級の水素製造設備があり、水素ステーションではミライの試乗もできるそうだ。三〇分以内なら無料みたいだ。
 今回の関係ある歌は、由紀さおりの『生きがい』。一九七〇年、山上路夫作詞、渋谷毅作曲・編曲。沢田研二の『白い部屋』。一九七五年、山上路夫作詞、加瀬邦彦作曲、東海林修編曲。坂本スミ子の『夜が明けて』。一九七一年、なかにし礼作詞、筒美京平作曲・編曲。
 今回の共通点は、いっしょに暮している恋人がいなくなってしまった喪失感を感じさせるというものである。
 まずは、『生きがい』をみてみよう。
 
 今あなたは目ざめ 煙草をくわえてる
 早く起きてね バスが来るでしょう
 お茶さえ飲まないで とび出してゆくのね
 体に毒よ いつもそうなの
 
 ここまでは、特に悲しい歌だとか、なにか心を動かされるようなことはない。夫婦のよくある朝の情景だなと思うぐらいである。
 ところが、この続きが、とても意外な展開である。
 
 アア あなたと別れた今でも
 アア 私はあなたと生きているの
 いつの日も 生きてるの
 
 ここで、あっそうだったのか、そういうことだったのかと驚く。そして、この女性にとても同情する心理状態になる。このあとの歌詞も、心を激しく動かされる感じがする。
 
 この、『生きがい』の状況を理解してもらえたら、これ以上、他の二つの歌の説明をする必要は、あまりないだろう。二曲続けてみてみたい。
 『白い部屋』。
 
 朝の光に ひとりめざめて
 なにげなしに あなた呼んだ
 答えなんか 聞こえて来ない
 わかっていたはずだ 僕は
 いつもコーヒー 冷めてしまうと
 僕をゆすり 起こした人
 それが今は かけがえのない
 だいじな やさしさと 知った
 
 『夜が明けて』
 
 夜が明けて 手さぐりをしてみた
 ぬけがらのとなりには
 だれもいない
 目をあけて 部屋のなか見てみた
 陽がもれる 窓のそば
 だれもいない
 
 作詞が同じせいか『生きがい』で女性から離れた男性の気持ちが『白い部屋』のように思える。
 前回触れたが、やはりこの時代は、「白」の歌が多い。(2025/8/11)
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 すいす物語
◆ 執筆年 2022年2月5日~