すいす物語

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  二〇二五年十一月

 JR東日本では燃料電池と蓄電池をハイブリッドしたHYBARIを2030年までに営業運転させる計画ということである。燃料電池はトヨタ、ハイブリッドシステムは日立の技術だそうである。将来的には鉄道は水素を基本的なエネルギーにするのであろうか。
 今回の関係ある歌は、ズー・ニー・ヴーの『白いサンゴ礁』。一九六九年、阿久悠作詞、村井邦彦作曲・編曲。松田聖子の『青い珊瑚礁』。一九八〇年、三浦徳子作詞、小田裕一郎作曲、大村雅朗編曲。
 今回の共通点は、いう必要がないであろう。
 まずは、『白いサンゴ礁』をみてみよう。
 
 青い海原
 群れ飛ぶ鴎
 心ひかれた
 白いサンゴ礁
 
 次は、『青い珊瑚礁』である。
 
 あゝ私の恋は南の風に乗って走るわ
 あゝ青い風切って走れあの島へ
 
 実は『青い珊瑚礁』には「青い珊瑚礁」という言葉は出てこない。「青い風」、「珊瑚礁」、「モスグリーン」はあるが、「青い珊瑚礁」はない。でも、十分に「青い珊瑚礁」がイメージできる。
 この歌は、とてもさわやかな気分になる。それは、歌詞もそうなのだが、やはり、曲調と歌い方がそうさせるのだろう。
 はじめてこの歌を聞いたのは小学校高学年だったと記憶している。なにかテレビ局付近の東京タワーの下あたりで、はじめてみかける女性が熱唱していたのを覚えている。それが、松田聖子だった。聞いた瞬間に好印象を持ったように思う。そう感じた人は、きっとたくさんいたのだろう。松田聖子は、この曲を歌ってから、あっという間に人気が出た。
 はじめにみた人がその後どうなったかということを考えたとき、松田聖子ほど想像以上だったことはあまりない。
 はじめにみた印象でいま思い浮かべられるのはどういうものだろうか。
 たとえばアグネス・チャンは割と鮮明である。名前が珍しいということもあったかもしれない。フィンガー5も印象的であった。白を基調にメンバーがそれぞれ違う色を使った衣装が、とても明るい時代を感じさせてくれた。特にメインボーカルの晃のサングラスは、この時代の空気感を象徴するものの一つではないかと思う。
 そういえば、彼らの衣装の基調を作っている白という色は、この時代の基調にもなっていたような印象がある。
 白い家、白い家具、白いギター、白い椅子、白いテーブル、白いピアノ、白いジャケット。
 そういうものに漠然と憧れた気がする。
 実際には、それほど身の回りが白いものばかりではなかったのだろうが、テレビや雑誌などで目にするものは、そういうものが多かったのではないか。
 もうなにか、戦争があったことははるか昔であり、日本は豊かになり、アメリカのような先進的で快適な生活を享受しているのだという気分にさせてくれる空気感だった。『白いサンゴ礁』もそういう時代が生み出した曲だろう。(2025/8/8)
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 すいす物語
◆ 執筆年 2022年2月5日~