野鳥庵主人の平凡な日常

野鳥庵主人の平凡な日常
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  二〇二四年一月

 いつのまにか家に雀が住み始めた。
 初めは、庭に十数羽でやってきて、こちらが見ると、一斉に逃げていった。
 そのうちに、そういうことが増えていった。
 そのうちに、屋根の隙間に出入りするようになった。どうやら巣を作っているらしい。彼らにとっては邪魔な屋根の部品を下に落として、自分たちの住みやすい道具を設置しているらしい。
 気づいたら、屋根は多くの雀たちの住処になっていた。
 この家のある地域は、「荒い」ということばを使った地名が多いので、ワイルドな生き物がたくさんいるのだろう。
 結婚祝いに、妻が当時勤めていたところの人たちから、鳩時計をいただいた。それがもう正常に動かなくなってしまった。時計を探しに行くと、どうしても鳥が鳴くタイプを求めてしまうようで、野鳥時計を買ってしまった。
 こういうのは、因縁なのかもしれない。鳩時計を持っていたから、この地域に移住したということではないが、鳩時計を持っていなければ、野鳥時計を買うという発想は出てこなかったであろう。
 野鳥時計は、日本野鳥の会が関係しているため、文字盤に「B」をかたどったシンボルマークがついている。「Wild Bird Society of Japan」を上手に組み合わせたシンボルマークになっているような気がする。
 それでは、この家は、「Wild Bird House」としてもいいような気がしてきた。野鳥庵(Wild Bird House)だ。その家の主人が平凡な日常の中で気づいたことを書き綴るのが、本文になるだろう。平凡な日常を書くのではなく、平凡な日常の中で気づいたことを書くのである。平凡な日常の中で、あれ、変だな? と思うことを書くかもしれないし、平凡な日常の中で、こういうことが起こるといいなと思うことを書くかもしれない。いずれにしても、実際に起こったことではなく、頭の中で思い描いたことを書くことになるだろう。そういう意味では、『すいす物語』とは、少し違うものになるだろう。『すいす物語』は、かなり忠実に、現実に起こったことを書いている。しかし、『野鳥庵』は、現実と多少の接点はあるものの、現実には起こらなかったことを書くつもりである。また、『すいす物語』は、分量を毎回一定にしているが、『野鳥庵』は、書ききったら終わりにするから、基本的にとても短いものが中心になるだろう。(2024/1/2)
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 野鳥庵主人の平凡な日常
◆ 執筆年 2024年1月2日~