メルヘンティック

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 彼女は何かを待ち望んでいたのです。
 しかし、自分ではまったく気づいていませんでした。
 ちょっと、友達と遊びにいったのです。
 いつもと同じはずの景色なのに、その日はなんとなく目に映るものが違って見えました。
 自分の家の近くの家や橋や川や雲や道や草原が、ほんの少しだけ小さく見えるようでしたし、また、色までもが違ったふうに見えました。
 だから、いつもの場所の脇にそれたところに初めて見る小屋が見えたとしても不思議はないような気がしました。
 小屋の中に入るのはとてもいけない感じがしました。ふたりはしかし、やめようと言いだす勇気のでないままおずおずと入ってしまいました。それは、ふたりだけの誰にも言えない秘密を作っているように思えました。
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 メルヘンティック
◆ 執筆年 1998年