メルヘンティック

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 小屋の中に、棚があって、小屋の持ち主が蓄えたに違いないチーズがたくさん並んでいました。チーズを作るための小屋だったのです。
 もし、持ち主に見つかったらひどく怒られるに違いありません。しかし、ふたりはしびれたように動けなくなってしまいました。
 ふたりは、ほんのかけらだけチーズを削って食べました。
 そして、こっそりと小屋を抜けて、家に帰りました。
 彼女は、次の日はひとりで小屋に入ってしまいました。なぜか、友達を誘うことがためらわれたのです。
 昨日よりもっとドキドキしました。
 友達はきていなかったので、心からほっとしました。やはり、今日も持ち主はいませんでした。
 チーズを削っては、息もつかずに食べ続けました。どうしてこんなにチーズを食べたくなったのか自分でもあきれるほどでした。
 そして、彼女が小屋へいってはチーズを食べることは日課になっていきました。友達と鉢合わせすることはいちどもありませんでした。
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 メルヘンティック
◆ 執筆年 1998年