レスキュー・ガール

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 彼はもういちど装備を点検した。大丈夫だった。これならどんな雪山にでもいけると、彼は確信した。
 彼は空港で仲間といっしょになった。男性6人、女性3人、全部で9人のパーティーだった。彼がリーダーだ。全員無事に帰ってこられるかどうかは、彼の能力と判断力にかかっていた。
 もっとも隊員はみんなベテランだ。いちばん経験の浅いものでさえ、チョモランマに登ったことがある。アルプス、ヒマラヤ、南極などの過酷な地域で鍛えてきた実力者集団である。かといって、自分の力を過信することもない。用意周到なメンバーである。
 計画にも無理がなかった。何度もシュミレーションした。あらゆる状況は頭の中に入った。あとは気象条件が味方してくれるかという心配だけだ。
 彼らを乗せた飛行機が到着した。はじめての国、はじめての山だった。特に困難な山というわけではなかった。しかしそれは、楽に登れるということを意味してはいなかった。
 人のあまり住まない地方なので、とにかく交通手段がなかった。山のふもとまでは、空港で借りたオフロード車を運転した。
 いよいよ登りはじめた。天候はあまりよくなかった。雪が深く、寒かった。まだふぶいていないのが救いだった。
 夜、テントで眠る時、激しい風の音が鳴り続けた。誰もが心細くなった。こういう時はいつも、どうしてまた山になんかきてしまったんだろうと後悔する。いったい無事に帰れるのだろうか?
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Glass Card

【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 レスキュー・ガール
◆ 執筆年 2000年1月24日