安部礼二小説作品集

1

　長く広い坂を、若い男女が連れだって歩いている。その中の、すれちがう男の誰もが振り向く、ジュエリーのように美しい女子大学生は、何かを証明しなければならなくなった。隣の若い男に何か言われると、安心した表情になる。
　群衆が取り囲む中、役人たちが厳かな様子で執務している。総督のような立場の年配女性が号令する。
　「はだえをあらわになさい」
　こざっぱりと化粧した、つややかな髪の、ジュエリーのように美しい女子大学生が、衆人が息を飲む中、ボタンをとり、チェックのブラウスを脱ぎ捨てる。ためらわずに青いブラジャーのホックをはずす。豊かな、張りのある、形のよい胸が、大きく波打つ。
　下を向いて、片方ずつ、まるでコンタクトレンズを外すかような動作で、眼球を、金属のトレイに落とす。トレイで、きれいに眼球が回転して止まる。
　のどに手をあてて、口から内臓をすっかり吐き出してしまう。