お得な話
1
いつもだったら烏で我慢するのだが、今日は奮発して猫にしようと思った。
「いらっしゃい。何にします?」
しまりの悪いサッシを開けると、揚げ物の匂いがむっときた。小母ちゃんは忙しすぎて愛想笑いをする余裕もない。でも、悪い人間じゃない。品質はとてもいいのに、良心的な値段だ。
「じゃあ、猫二百g。あと、ポテトサラダも二百」
小母ちゃんが一見無造作だが、意外と正確に量って、包んで、渡してくれた。お札を渡す。コインが返ってきた。
「毎度ありがとうございます。ちょっとサービスしておきましたよ」
「あ、どうもすみません」
いつもこんなふうにサービスしてくれる。お得な店だなあ。
助手席にビニール袋を置いて、住宅街を縫って行く。信号で止まるたびにビニールがガサガサ音を立てる。歩いている人や看板に気を取られて走る間、何度かガサガサした音で助手席に視線を移すことになった。そこには何の問題もなかった。袋が猫の包みとポテトサラダのパックで膨らんでいるだけだ。妙な形の車や何を売っているのかわからない店に気を取られてハンドルを握る間、何かか細い声が聞こえてくるような気がした。それは耳を澄ますと聞こえない。神経を運転に集中させるとまた聞こえるみたい。耳を澄ます。何事もない。車のどこかのねじでも弛んでいるのかもしれない。あとで車屋に見てもらおう。
「いらっしゃい。何にします?」
しまりの悪いサッシを開けると、揚げ物の匂いがむっときた。小母ちゃんは忙しすぎて愛想笑いをする余裕もない。でも、悪い人間じゃない。品質はとてもいいのに、良心的な値段だ。
「じゃあ、猫二百g。あと、ポテトサラダも二百」
小母ちゃんが一見無造作だが、意外と正確に量って、包んで、渡してくれた。お札を渡す。コインが返ってきた。
「毎度ありがとうございます。ちょっとサービスしておきましたよ」
「あ、どうもすみません」
いつもこんなふうにサービスしてくれる。お得な店だなあ。
助手席にビニール袋を置いて、住宅街を縫って行く。信号で止まるたびにビニールがガサガサ音を立てる。歩いている人や看板に気を取られて走る間、何度かガサガサした音で助手席に視線を移すことになった。そこには何の問題もなかった。袋が猫の包みとポテトサラダのパックで膨らんでいるだけだ。妙な形の車や何を売っているのかわからない店に気を取られてハンドルを握る間、何かか細い声が聞こえてくるような気がした。それは耳を澄ますと聞こえない。神経を運転に集中させるとまた聞こえるみたい。耳を澄ます。何事もない。車のどこかのねじでも弛んでいるのかもしれない。あとで車屋に見てもらおう。
