うさぎの穴
5
その長方形の空間を使うと、自由にガレージと玄関を行き来できた。しかし、2010年に行くことはもうなかった。石膏ボードがないと2010年に行くことができないのか、それとも、二人の思いが通じ合ったから、もう時間旅行の必要性がなくなったのか、その辺はわからなかった。ただ、あの石膏ボードはどこへ行ったのだろうかと、それが不思議だった。
翌日、私は30半ばになった三村さんが玄関ベルを鳴らすのを待った。しかし、夜遅くまで待っていても、ベルは鳴らなかった。
私はあることに気付いて、激しく後悔していた。何で住所とか電話番号とか、書いて渡さなかったんだろうか? 三村さんのをもらうのも忘れていた。そういう言葉が私の口から出るのを抑えることはできなかった。
後から冷静に考えればそんなことをしないわけがないとかするわけがないとかいうことを、人は時々しなかったりしたりする。どうしてなんだろうか? しかし、あの時は頭がいっぱいだったのだ。それに、得体のしれない恐怖に追い立てられてもいた。それは、あの穴がいつまでもつながっていることはなく、いつまたただの穴に戻ってしまうのではないかということだった。これは経験した人でないとわからない感覚だ。私は実はあの日三村さんと別れるまで、そのことをずっと心配していたのだ。三村さんもそれを心配していたと思う。2010年の三村さんが2024年に取り残されてしまったら、たぶんまずいことになるだろう。どういうことがまずいのか予想もつかないだけに、非常に怖かった。そうなる前に、早く三村さんを帰さなくちゃと思った。三村さんはもっと強くそう思っていただろう。それは、私が2010年の世界にいたときに、早く2024年の世界に戻らなければと思ったのと同じだと思う。何しろ身分を証明するものも金も自分の身の置き所も何もないのである。三村さんは怖かったはずだ。普通の精神状態だったら、普通に思いつくことが、あの時に思いつかなかったとしても仕方ないことなのだ。私はそういいきかせて自分を慰め、三村さんを弁護した。
住所がわからないんじゃ、来られないよな。私はそう思いながらも、やはりいつか三村さんが私を探し当ててくれるだろうと期待した。
次の日も次の日も私はベルが鳴るのを待った。
やっぱり三村さんは来なかった。
三村さんは私の家を見つけられないのだろうなと思った。
もしかしたら、三村さんの気持ちが変わってしまったのだろうかとも思った。考えてみればそれは無理もない話だった。大学生から30半ばになるまでに、彼女はたくさんの男性から言い寄られるだろう。それを断って、私のような何のとりえもない男と結婚しようと思い続けるのは、やはり不自然である。
私は、これ以上三村さんを待つのはやめた方がいいかもしれないと迷い始めた。
そんなある日のことだった。私は、会社で給与関係を担当している女の子から声をかけられた。彼女は自分の彼氏や友達とスキーに行くのだが、できればもう一人男の人が来てくれるといいといい、私を誘った。私は何の気なしに承諾し、雪山に行ったのだが、どうも彼女の友達というのが、私を連れていけないか彼女に相談したのだということが、だんだんわかってきた。それは、私を誘った彼女がなるべく彼氏と二人になりたがり、したがって、自然と私ともう一人の女の子が二人きりになりがちになったことからも、簡単に推測できたのであった。
私は参ったなと思ったが、それでもその女の子がとても優しくて控えめな感じだったので、だんだん好感を抱くようになっていった。
雪山を下りてからも、二人でどこかへ出かけるということが何度か重なり、私はその女の子をいとしいと思うようになってきた。
その女の子が現実問題を口にするようになったある日、私は夜中にはっと目が覚めて、そのまま自分の状況を長い時間真剣に考えた。
もちろん三村さんのことであった。
三村さんと私は誓いあったのである。
しかし、私はこうも思った。
三村さんはもう私の家を見つけられないだろう。それに、きっともうほかの人と結婚してしまっただろう。
これらは、その時の私にとって好都合の考えであった。
私が、幻影といっても過言ではないような人をいつまでも追い続けることから、現実に存在する人と確実に人間関係を形成するという方向へ自分の足を向けてしまおうかと思った時であった。
突然私の頭に、自分自身の経験によって得た教訓が太い字体で浮かび上がってきた。
チャンスというものは訪れるものである。しかし、それは、皮肉な形で訪れるということがしばしばである。
私はその教訓をかみしめながら、自分の進むべき道というものを、もう一度考え直してみた。
高校生の時、三村さんの信頼を失ったのは、タイミングよく現れた女の子が原因だった。
ということは、今回現れた女の子も、皮肉な結末につながる、神様か仏様の与えた試練なのかもしれない。
しかし、そうではないかもしれない。
こういう正反対の方向にある私の取るべき道のどちらを選ぶべきかについて、私は長い時間いったりきたりしていた。
すると突然、あの料理店で私を見つめた三村さんの表情を思い出した。三村さんは「私を信じて」といっていたのだ。
三村さんを信じよう。
私はそう思った。
裏切られたら、このまま一生独身で過ごしたっていいじゃないか。
どうせ人間は最後は一人で死んでいくんだ。
私はそうも思った。
もうあたりが明るかった。
私は、次の日、例の女の子に謝罪した。
私には遠いところに、離れ離れに暮らしている婚約者がいる。彼女が遠くから戻ってきたら、結婚することになっている。
ところが、最近彼女からの連絡が途絶え、戻ってこないかもしれない。
それなので、彼女をあきらめて君と交際を始めた。
だけど、いつか彼女は戻ってくるかもしれない。
それはわからない。
わからないけど、いつまでも待とうと思った。
だから、君とこのまま交際を続けるわけにはいかない。
そういうことをいって、謝罪すると、彼女は、激しく泣いた。
その涙は、半分は悲しいから、半分は感動したからだといった。
わかった。私はあきらめる。そして、あなたを応援している。
彼女はそういって、去っていった。
その夜はクリスマスだった。
街の恋人たちは、楽しそうに過ごしていた。
しかし、私と彼女は、どちらもさみしく別れた。
私は、暗い気持ちで家に着いた。
窓が黄色かった。
私は電気を消し忘れて出かけたのだと思った。
玄関に近づくと、中から音楽がかすかに聞こえてきた。
私はスピーカーも付けっぱなしだったのかなと思った。
私はブルートゥースでスマホとスピーカーをつなげて音楽を聴いていた。だから、スマホも置いていかなければ音楽はならないはずである。
私はさっきまで車で音楽を聴いていたから、スマホは自分で持っているはずだった。
わけがわからないと思いながら、玄関に入ると、何の曲がかかっているのかわかった。
斉藤和義の「ずっと好きだった」だった。
ずっと好きだったんだぜ
相変わらず綺麗だな
部屋の中は明るかった。私はスピーカーに近づいた。
女性の笑い声が近づいてきた。
「メリークリスマス!」
私は女性に抱きつかれていた。
女性は私を抱きしめたまま顔をあげて、うれしそうに私を見た。
もちろん三村さんだった。三村さんは30半ばになっているみたいだった。でも、相変わらずきれいだった。
私も三村さんを両腕で抱きしめた。
私の頬は濡れていた。三村さんも泣いていた。
落ち着いてから、私はいった。
「俺の家、よくわかったね」
三村さんはしきりと謝っていた。
「ごめんね、うっかりしていたわ。私、あの日が2024年の何月何日なのか、確かめていなかったの」
「じゃあ、俺の家がわからなかったんじゃなかったんだ」
「だって、2010年に帰って、すぐに探しにいったもの。だって、記憶の新しいうちに見つけないと、わからなくなっちゃうでしょ? 街の大通りのあのレストランから、車で通ったはずの道順をたどったの。だいたいこの辺ってところまではわかったんだけど、その後が大変だった。似たような家がたくさん並んでいたんだもん」
「それでどうやって探し当てたの」
「これ」
三村さんはガレージのスイッチを高く上げた。
「一軒一軒確かめたの。開いたときはうれしかった」
「そうか。そういう方法があったね」
私は感心していた。
「そんなことより、あの日のあなたにとっての明日がいつなのかということのが大問題だったわ」
「それはどうやって確かめたの?」
「うん、寒くなかったから、絶対冬じゃないと思ったの。だから冬になるまで待ったの。ただなるべく安全策を取って、2024年の終わりの日に行こうと思ったの。今日は終わりの日じゃないけど、クリスマスだし、ここまでくれば大丈夫かなと思って。ねえ、だけど、そんなことより、大丈夫? あなたは、あの日のことを知っている坂本君よね。そうじゃないと、こんなおばさんが突然やってきたら、迷惑がって、追い出されちゃうじゃない?」
「そうだよ。あの日の明日を楽しみに待っていた俺だよ。本当にずっと待ってたよ。本当にいいんだね。こんな俺なんかで」
三村さんは、体を離し、私の目をじっと見た。
「ごめんなさい。私、一つだけ謝らなければならないことがあるの。それをいわないと、あなたに申し訳なくて。実は、私、一回だけ心変わりしかけたの。ううん。でもね、その男の人とは何もなかったのよ。ただ結婚してほしいっていわれて、少し迷ったの。私、15年たったら30半ばだし、その時の私の顔を見たら、坂本君に嫌われちゃうかもしれないし、どうしようかなって、本当に少しだけ迷ったの。でも、あなたはきっと待っててくれると信じることにかけたの。だって、そうしないと、私たちを会わせてくれたうさぎの穴に申し訳ないじゃない? うさぎの穴の好意を無駄にしたら、私は絶対不幸になると思ったの。それが一番怖かったかな?」
最後は冗談のように笑いながらいって、また、三村さんは私に体を寄せようとしたが、私は三村さんの両肩を押さえ、頭を下げた。
「ごめん。実は俺も一つだけ謝らなければならないことがあるんだ」
――END――
(2024/12/30)
翌日、私は30半ばになった三村さんが玄関ベルを鳴らすのを待った。しかし、夜遅くまで待っていても、ベルは鳴らなかった。
私はあることに気付いて、激しく後悔していた。何で住所とか電話番号とか、書いて渡さなかったんだろうか? 三村さんのをもらうのも忘れていた。そういう言葉が私の口から出るのを抑えることはできなかった。
後から冷静に考えればそんなことをしないわけがないとかするわけがないとかいうことを、人は時々しなかったりしたりする。どうしてなんだろうか? しかし、あの時は頭がいっぱいだったのだ。それに、得体のしれない恐怖に追い立てられてもいた。それは、あの穴がいつまでもつながっていることはなく、いつまたただの穴に戻ってしまうのではないかということだった。これは経験した人でないとわからない感覚だ。私は実はあの日三村さんと別れるまで、そのことをずっと心配していたのだ。三村さんもそれを心配していたと思う。2010年の三村さんが2024年に取り残されてしまったら、たぶんまずいことになるだろう。どういうことがまずいのか予想もつかないだけに、非常に怖かった。そうなる前に、早く三村さんを帰さなくちゃと思った。三村さんはもっと強くそう思っていただろう。それは、私が2010年の世界にいたときに、早く2024年の世界に戻らなければと思ったのと同じだと思う。何しろ身分を証明するものも金も自分の身の置き所も何もないのである。三村さんは怖かったはずだ。普通の精神状態だったら、普通に思いつくことが、あの時に思いつかなかったとしても仕方ないことなのだ。私はそういいきかせて自分を慰め、三村さんを弁護した。
住所がわからないんじゃ、来られないよな。私はそう思いながらも、やはりいつか三村さんが私を探し当ててくれるだろうと期待した。
次の日も次の日も私はベルが鳴るのを待った。
やっぱり三村さんは来なかった。
三村さんは私の家を見つけられないのだろうなと思った。
もしかしたら、三村さんの気持ちが変わってしまったのだろうかとも思った。考えてみればそれは無理もない話だった。大学生から30半ばになるまでに、彼女はたくさんの男性から言い寄られるだろう。それを断って、私のような何のとりえもない男と結婚しようと思い続けるのは、やはり不自然である。
私は、これ以上三村さんを待つのはやめた方がいいかもしれないと迷い始めた。
そんなある日のことだった。私は、会社で給与関係を担当している女の子から声をかけられた。彼女は自分の彼氏や友達とスキーに行くのだが、できればもう一人男の人が来てくれるといいといい、私を誘った。私は何の気なしに承諾し、雪山に行ったのだが、どうも彼女の友達というのが、私を連れていけないか彼女に相談したのだということが、だんだんわかってきた。それは、私を誘った彼女がなるべく彼氏と二人になりたがり、したがって、自然と私ともう一人の女の子が二人きりになりがちになったことからも、簡単に推測できたのであった。
私は参ったなと思ったが、それでもその女の子がとても優しくて控えめな感じだったので、だんだん好感を抱くようになっていった。
雪山を下りてからも、二人でどこかへ出かけるということが何度か重なり、私はその女の子をいとしいと思うようになってきた。
その女の子が現実問題を口にするようになったある日、私は夜中にはっと目が覚めて、そのまま自分の状況を長い時間真剣に考えた。
もちろん三村さんのことであった。
三村さんと私は誓いあったのである。
しかし、私はこうも思った。
三村さんはもう私の家を見つけられないだろう。それに、きっともうほかの人と結婚してしまっただろう。
これらは、その時の私にとって好都合の考えであった。
私が、幻影といっても過言ではないような人をいつまでも追い続けることから、現実に存在する人と確実に人間関係を形成するという方向へ自分の足を向けてしまおうかと思った時であった。
突然私の頭に、自分自身の経験によって得た教訓が太い字体で浮かび上がってきた。
チャンスというものは訪れるものである。しかし、それは、皮肉な形で訪れるということがしばしばである。
私はその教訓をかみしめながら、自分の進むべき道というものを、もう一度考え直してみた。
高校生の時、三村さんの信頼を失ったのは、タイミングよく現れた女の子が原因だった。
ということは、今回現れた女の子も、皮肉な結末につながる、神様か仏様の与えた試練なのかもしれない。
しかし、そうではないかもしれない。
こういう正反対の方向にある私の取るべき道のどちらを選ぶべきかについて、私は長い時間いったりきたりしていた。
すると突然、あの料理店で私を見つめた三村さんの表情を思い出した。三村さんは「私を信じて」といっていたのだ。
三村さんを信じよう。
私はそう思った。
裏切られたら、このまま一生独身で過ごしたっていいじゃないか。
どうせ人間は最後は一人で死んでいくんだ。
私はそうも思った。
もうあたりが明るかった。
私は、次の日、例の女の子に謝罪した。
私には遠いところに、離れ離れに暮らしている婚約者がいる。彼女が遠くから戻ってきたら、結婚することになっている。
ところが、最近彼女からの連絡が途絶え、戻ってこないかもしれない。
それなので、彼女をあきらめて君と交際を始めた。
だけど、いつか彼女は戻ってくるかもしれない。
それはわからない。
わからないけど、いつまでも待とうと思った。
だから、君とこのまま交際を続けるわけにはいかない。
そういうことをいって、謝罪すると、彼女は、激しく泣いた。
その涙は、半分は悲しいから、半分は感動したからだといった。
わかった。私はあきらめる。そして、あなたを応援している。
彼女はそういって、去っていった。
その夜はクリスマスだった。
街の恋人たちは、楽しそうに過ごしていた。
しかし、私と彼女は、どちらもさみしく別れた。
私は、暗い気持ちで家に着いた。
窓が黄色かった。
私は電気を消し忘れて出かけたのだと思った。
玄関に近づくと、中から音楽がかすかに聞こえてきた。
私はスピーカーも付けっぱなしだったのかなと思った。
私はブルートゥースでスマホとスピーカーをつなげて音楽を聴いていた。だから、スマホも置いていかなければ音楽はならないはずである。
私はさっきまで車で音楽を聴いていたから、スマホは自分で持っているはずだった。
わけがわからないと思いながら、玄関に入ると、何の曲がかかっているのかわかった。
斉藤和義の「ずっと好きだった」だった。
ずっと好きだったんだぜ
相変わらず綺麗だな
部屋の中は明るかった。私はスピーカーに近づいた。
女性の笑い声が近づいてきた。
「メリークリスマス!」
私は女性に抱きつかれていた。
女性は私を抱きしめたまま顔をあげて、うれしそうに私を見た。
もちろん三村さんだった。三村さんは30半ばになっているみたいだった。でも、相変わらずきれいだった。
私も三村さんを両腕で抱きしめた。
私の頬は濡れていた。三村さんも泣いていた。
落ち着いてから、私はいった。
「俺の家、よくわかったね」
三村さんはしきりと謝っていた。
「ごめんね、うっかりしていたわ。私、あの日が2024年の何月何日なのか、確かめていなかったの」
「じゃあ、俺の家がわからなかったんじゃなかったんだ」
「だって、2010年に帰って、すぐに探しにいったもの。だって、記憶の新しいうちに見つけないと、わからなくなっちゃうでしょ? 街の大通りのあのレストランから、車で通ったはずの道順をたどったの。だいたいこの辺ってところまではわかったんだけど、その後が大変だった。似たような家がたくさん並んでいたんだもん」
「それでどうやって探し当てたの」
「これ」
三村さんはガレージのスイッチを高く上げた。
「一軒一軒確かめたの。開いたときはうれしかった」
「そうか。そういう方法があったね」
私は感心していた。
「そんなことより、あの日のあなたにとっての明日がいつなのかということのが大問題だったわ」
「それはどうやって確かめたの?」
「うん、寒くなかったから、絶対冬じゃないと思ったの。だから冬になるまで待ったの。ただなるべく安全策を取って、2024年の終わりの日に行こうと思ったの。今日は終わりの日じゃないけど、クリスマスだし、ここまでくれば大丈夫かなと思って。ねえ、だけど、そんなことより、大丈夫? あなたは、あの日のことを知っている坂本君よね。そうじゃないと、こんなおばさんが突然やってきたら、迷惑がって、追い出されちゃうじゃない?」
「そうだよ。あの日の明日を楽しみに待っていた俺だよ。本当にずっと待ってたよ。本当にいいんだね。こんな俺なんかで」
三村さんは、体を離し、私の目をじっと見た。
「ごめんなさい。私、一つだけ謝らなければならないことがあるの。それをいわないと、あなたに申し訳なくて。実は、私、一回だけ心変わりしかけたの。ううん。でもね、その男の人とは何もなかったのよ。ただ結婚してほしいっていわれて、少し迷ったの。私、15年たったら30半ばだし、その時の私の顔を見たら、坂本君に嫌われちゃうかもしれないし、どうしようかなって、本当に少しだけ迷ったの。でも、あなたはきっと待っててくれると信じることにかけたの。だって、そうしないと、私たちを会わせてくれたうさぎの穴に申し訳ないじゃない? うさぎの穴の好意を無駄にしたら、私は絶対不幸になると思ったの。それが一番怖かったかな?」
最後は冗談のように笑いながらいって、また、三村さんは私に体を寄せようとしたが、私は三村さんの両肩を押さえ、頭を下げた。
「ごめん。実は俺も一つだけ謝らなければならないことがあるんだ」
――END――
(2024/12/30)
