ローカル・コミュニケーション

7
ベッドの中で、敏行の腕にかわいい頭を預けて、沙於里は話し掛けた。
「三味線、おじいさんから教わったの?」
「ああ、じいちゃんも教えてくれたし、とうちゃんからも教わった。」
「素敵ね。それで身を立てようとは思わなかったの?」
「それはないよ。この世界でやっていくには、余程の技量と、それ以上に運がないとだめさ。市場が小さすぎるからね。俺は、じいちゃんたちに教わったことを子どもたちに伝えていければそれで十分だと思ってる。」
「いいわね。私たちの子どもが技を継承していくのかしら。」
彼女は本気とも冗談ともとれないような言い方をして笑った。
敏行は、「私たちの子ども」という響きにうれしくなり、沙於里の白い体を抱き寄せた。
敏行は、沙於里に夢中になった。
実は彼は、ネットの結婚情報システムで紹介された女性の内、何人かと情報交換を試み、その中の一人とは結婚に漕ぎ着ける期待が強いと考えていた。しかし、この夜を境にして、まだ会ったことすらないその女性と深いやり取りをすることは避けるようになった。
すると、相手はこちらの真意を探る動きに出た。
ある日、仕事から戻ってメールチェックしていると、女性からの切実な提案が届いていた。
「黒澤さん、私の思い過ごしかもしれませんが、最近あなたからメールをいただくことが少なくなったように感じられるのです。ごめんなさい。今のは忘れてください。私の気のせいです。おそらく、あなたから来るメールを読むのが楽しくて、もっと読みたいという気持ちが強いのでしょう。あなたの言葉は、一言一言が思いやりにあふれていて、一日の仕事を終えて疲れた私の心を癒してくれるのです。私は、最近あなたとお会いできたらとても楽しいかもしれないと思っています。本当ですよ。別に、それで結婚とか考えようというわけではなくて、気楽に会ってみて、また、メールのやり取りをする中で、また会いたくなったら会う、そんな感じで考えているだけなのですが。あなたはどう思いますか。お返事ください。お仕事がんばり過ぎないように気をつけてくださいね。それでは失礼いたします。山形寛子より。」
「三味線、おじいさんから教わったの?」
「ああ、じいちゃんも教えてくれたし、とうちゃんからも教わった。」
「素敵ね。それで身を立てようとは思わなかったの?」
「それはないよ。この世界でやっていくには、余程の技量と、それ以上に運がないとだめさ。市場が小さすぎるからね。俺は、じいちゃんたちに教わったことを子どもたちに伝えていければそれで十分だと思ってる。」
「いいわね。私たちの子どもが技を継承していくのかしら。」
彼女は本気とも冗談ともとれないような言い方をして笑った。
敏行は、「私たちの子ども」という響きにうれしくなり、沙於里の白い体を抱き寄せた。
敏行は、沙於里に夢中になった。
実は彼は、ネットの結婚情報システムで紹介された女性の内、何人かと情報交換を試み、その中の一人とは結婚に漕ぎ着ける期待が強いと考えていた。しかし、この夜を境にして、まだ会ったことすらないその女性と深いやり取りをすることは避けるようになった。
すると、相手はこちらの真意を探る動きに出た。
ある日、仕事から戻ってメールチェックしていると、女性からの切実な提案が届いていた。
「黒澤さん、私の思い過ごしかもしれませんが、最近あなたからメールをいただくことが少なくなったように感じられるのです。ごめんなさい。今のは忘れてください。私の気のせいです。おそらく、あなたから来るメールを読むのが楽しくて、もっと読みたいという気持ちが強いのでしょう。あなたの言葉は、一言一言が思いやりにあふれていて、一日の仕事を終えて疲れた私の心を癒してくれるのです。私は、最近あなたとお会いできたらとても楽しいかもしれないと思っています。本当ですよ。別に、それで結婚とか考えようというわけではなくて、気楽に会ってみて、また、メールのやり取りをする中で、また会いたくなったら会う、そんな感じで考えているだけなのですが。あなたはどう思いますか。お返事ください。お仕事がんばり過ぎないように気をつけてくださいね。それでは失礼いたします。山形寛子より。」