ローカル・コミュニケーション
10
敏行の方は、どうやって話を切り出そうかと頭を悩ませているから、料理やワインを味わう余裕がない。彼は思い切って言ってしまおうと決意した。
「実は会社の命令で中国に行かなければならないんですよ。」
「あら、どのくらいかしら?」
「夏から半年ほどの期間です。」
「それなら、春先にはまたお会いできるんでしょう?」
「ええ、たぶん。」
「たぶん?」
「滞在が半年というのはあくまでも見通しに過ぎなくて、実際に行ってみないとなんとも言えないところがあるんですよ。」
これは本当のことだった。滞在期間については延長される可能性が高かったのだ。
「でも、私たちは基本的にメールで連絡を取り合っているだけだから、あなたが中国にいても、韓国にいても今までとは余り変わらないわね。こうしてお会いしてみて、あなたは私の予想通り誠実な方だということが分かったわ。これからも今までどおりにメールの交換をしましょう。そして、中国から戻ってきて、あなたがその気ならまたお会いしましょうよ。私はその間待っているわ。」
「ありがとう。」
彼はそういうとまた考えてしまった。どうも自分の思ったとおりに話を進めることができない。彼は落ち着きなく店内を見回したり、電飾された大通りの商店街に目をやったりした。
すると、車道からこの料理店に入ってくる真珠色の車が、彼の目に止まった。
「あっ。」
彼は思わず声を発して、立ち上がった。彼が思ったとおり、辻村加世子の車だった。助手席に沙於里が乗っている。
「そうだ、この店は辻村さんに教わったんだ。会社のお茶の時間に、グルメの彼女がみんなに紹介した店の一つがここだったんだ。なぜ、予約したときにそのことに気づかなかったのだろうか。」
彼の額から汗が流れてきた。
「どうしたの?」
「実は会社の命令で中国に行かなければならないんですよ。」
「あら、どのくらいかしら?」
「夏から半年ほどの期間です。」
「それなら、春先にはまたお会いできるんでしょう?」
「ええ、たぶん。」
「たぶん?」
「滞在が半年というのはあくまでも見通しに過ぎなくて、実際に行ってみないとなんとも言えないところがあるんですよ。」
これは本当のことだった。滞在期間については延長される可能性が高かったのだ。
「でも、私たちは基本的にメールで連絡を取り合っているだけだから、あなたが中国にいても、韓国にいても今までとは余り変わらないわね。こうしてお会いしてみて、あなたは私の予想通り誠実な方だということが分かったわ。これからも今までどおりにメールの交換をしましょう。そして、中国から戻ってきて、あなたがその気ならまたお会いしましょうよ。私はその間待っているわ。」
「ありがとう。」
彼はそういうとまた考えてしまった。どうも自分の思ったとおりに話を進めることができない。彼は落ち着きなく店内を見回したり、電飾された大通りの商店街に目をやったりした。
すると、車道からこの料理店に入ってくる真珠色の車が、彼の目に止まった。
「あっ。」
彼は思わず声を発して、立ち上がった。彼が思ったとおり、辻村加世子の車だった。助手席に沙於里が乗っている。
「そうだ、この店は辻村さんに教わったんだ。会社のお茶の時間に、グルメの彼女がみんなに紹介した店の一つがここだったんだ。なぜ、予約したときにそのことに気づかなかったのだろうか。」
彼の額から汗が流れてきた。
「どうしたの?」