思われ-チェリー・ブラッサム・ピンク-
33
私が戻ると、門倉は楽しそうに桃子と話していた。まもなく茉梨絵も戻ってきたので私たちは店を出ることにした。女の子たち二人はとても幸福だと言って再びインスパイアーの後部座席に仲良く腰掛けた。
「芳彦先生、何か音楽でも掛けてくださいよ。」
桃子が運転席の後ろの席から首を伸ばしてそう言った。
「私の世代が聞くものなんて君たちには古臭いだろう?」
「あら、そういうのがかえって私たちには新鮮なんですよ。」
桃子がそう言うと茉梨絵も調子を合わせた。私はこの間の夜、門倉に聴かせたシュープリームスのCDをかけた。彼女たちの反応はすごかった。次の曲がかかるたびに、「いいよねー。」などと言ってはしゃいでいた。みんなでわいわいやっているから、何でも楽しく感じられるのだろう。門倉も話を合わせて、女の子たちを湧かせた。桃子は特にシュープリームスが気に入ったみたいで、曲が変わるたびに門倉に解説を求めた。解説を求めるなら私の方へすべきだが、門倉が自分の知っている限りの情報の断片をつなぎ合わせて、知識のない人が聞いたら敬意を払ってしまうほど上手に話し、それを桃子が熱心に聞いていたので、私は何も言わなかった。本当にこのような門倉の要領のよさには今更ながら感心してしまう。きっと門倉は結婚してからもそれほど少なくはない数の女の子を夢中にさせたのではないか。私はやっかみ半分でそんな邪推をした。そのうちに彼は、私の家でこのCDを聴いているうちに思い出した不思議な話を女の子たちに語りだした。女の子たちはその話にとても興味を持った。好奇心旺盛な桃子は、「先生、今からそのお墓に行ってみませんか。」と言い出した。私が「あまり不謹慎なことを言ってはいけないよ。」と冷静に諭すと、彼女は反省して素直に従った。学生時代というのはいろいろと羽目をはずしてみたくなるものだから、私は彼女のことをそんなに悪く思ったわけではなかった。ただ、してあげられることと、してあげられないこととの違いは、明確に示しておきたかったのだ。
家に戻り、リビングでくつろいでいると、「そろそろ俺は帰ってみるよ。」と言って、門倉が静かに出て行った。何気なく振舞っていたが、相当顔色が悪かった。おそらくすぐにでも布団にもぐりこんで眠り込んでしまいたいのではないかと、私は想像した。おそらく風邪を相当にこじらせてしまったのだろうか、それとも遼子の言う通り……。馬鹿馬鹿しい。あんなに美人で優しそうな奥さんがそんな怖ろしいことを考えるはずがない。私はそう思った。
「芳彦先生、何か音楽でも掛けてくださいよ。」
桃子が運転席の後ろの席から首を伸ばしてそう言った。
「私の世代が聞くものなんて君たちには古臭いだろう?」
「あら、そういうのがかえって私たちには新鮮なんですよ。」
桃子がそう言うと茉梨絵も調子を合わせた。私はこの間の夜、門倉に聴かせたシュープリームスのCDをかけた。彼女たちの反応はすごかった。次の曲がかかるたびに、「いいよねー。」などと言ってはしゃいでいた。みんなでわいわいやっているから、何でも楽しく感じられるのだろう。門倉も話を合わせて、女の子たちを湧かせた。桃子は特にシュープリームスが気に入ったみたいで、曲が変わるたびに門倉に解説を求めた。解説を求めるなら私の方へすべきだが、門倉が自分の知っている限りの情報の断片をつなぎ合わせて、知識のない人が聞いたら敬意を払ってしまうほど上手に話し、それを桃子が熱心に聞いていたので、私は何も言わなかった。本当にこのような門倉の要領のよさには今更ながら感心してしまう。きっと門倉は結婚してからもそれほど少なくはない数の女の子を夢中にさせたのではないか。私はやっかみ半分でそんな邪推をした。そのうちに彼は、私の家でこのCDを聴いているうちに思い出した不思議な話を女の子たちに語りだした。女の子たちはその話にとても興味を持った。好奇心旺盛な桃子は、「先生、今からそのお墓に行ってみませんか。」と言い出した。私が「あまり不謹慎なことを言ってはいけないよ。」と冷静に諭すと、彼女は反省して素直に従った。学生時代というのはいろいろと羽目をはずしてみたくなるものだから、私は彼女のことをそんなに悪く思ったわけではなかった。ただ、してあげられることと、してあげられないこととの違いは、明確に示しておきたかったのだ。
家に戻り、リビングでくつろいでいると、「そろそろ俺は帰ってみるよ。」と言って、門倉が静かに出て行った。何気なく振舞っていたが、相当顔色が悪かった。おそらくすぐにでも布団にもぐりこんで眠り込んでしまいたいのではないかと、私は想像した。おそらく風邪を相当にこじらせてしまったのだろうか、それとも遼子の言う通り……。馬鹿馬鹿しい。あんなに美人で優しそうな奥さんがそんな怖ろしいことを考えるはずがない。私はそう思った。