思われ-チェリー・ブラッサム・ピンク-

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それから、私は未解決の問題に話を戻した。
「だけど、わざとじゃないとすると、璃鴎が気を失ったのはどういうわけなんだい?」
「桜さんが、ものすごい勢いで飛び出していったんだよ。多分お父さんがお札を取り替えた瞬間だったんだと思う。桜さんは封印が解けたから、一気に門倉さんのところへ行ったんだよ。その動きがものすごく急だったんで、僕はびっくりしてしまったんだ。普通の人にはわかりづらいよね。例えて言うと、ものすごい音量の音楽をいきなりヘッドホンで聞かされたような感じだよ。」
「うわ、それはすごいね。耳がどうかしちゃうね。」
桃子はそう言いながら思わず両耳をふさいだ。
「そうか、それほどの思いで桜さんが門倉さんの許へ行ったってことは、よっぽど門倉さんのことを強く思っているのね。」
そう遼子が解釈すると、それをさらに璃鴎は修正した。
「それもあるけど、きっと門倉さんに大きな危機が迫っているんだよ。でも、桜さんが守りに入ったから、僕らの力もこれで役立てられるよ。」
「璃鴎、そんなにあの奥さんは力が強いの。」
「門倉の小母さんは何かどうしてもかなえたい願望を持っているのかもしれない。そして、その思いが神社の神様の力と結び付いて、守護霊を封印するほどになったんじゃないかな。門倉の小母さんもそんなふうにはっきり意識していないと思うけど、偶然が重なってそうなったんだよ。」
「守護霊?」と桃子が訊いた。
「桜さんのことだよ。桜さんは亡くなってからずっと門倉の小父さんを守っていたんだ。」
「璃鴎君、どうしてそんなことがわかるの?」
「さっき、僕が倒れていた時、桜さんが僕に教えてくれたんだ。」
璃鴎が答えると桃子はさらに疑問をぶつけた。
「だって、桜さんは門倉さんのところへ行ったんでしょ?」
「そうなんだけど、霊はここと向こうと同時に存在できるんだよ。例えて言えば電波みたいなものかな。インターネットのサイトは同時にいろいろな場所で開けるでしょ。」
桃子は感心して何度もうなずいた。
「璃鴎君、説明が上手だね。本当に君はすごい子だよ。」
璃鴎は、桃子の大きな美しい目で穴の開くほど見つめられて照れていた。
遼子は運転しながら左手でお札を持ち上げた。
「このお札が桜さんの霊を封じ込めていたというのね。茉梨ちゃん、ちょっと開けてみてくれない。」
遼子は、お札の包みを茉梨絵に開けさせた。
私はケータイ越しにそれをとがめた。
「お札をそんなふうに扱っちゃまずいんじゃないか。」
しかし、茉梨絵の耳には入らなかったようで、彼女は中身をすっかり出してしまった。
「何これ? すごいよ。」
「何? 何?」
「だけど、わざとじゃないとすると、璃鴎が気を失ったのはどういうわけなんだい?」
「桜さんが、ものすごい勢いで飛び出していったんだよ。多分お父さんがお札を取り替えた瞬間だったんだと思う。桜さんは封印が解けたから、一気に門倉さんのところへ行ったんだよ。その動きがものすごく急だったんで、僕はびっくりしてしまったんだ。普通の人にはわかりづらいよね。例えて言うと、ものすごい音量の音楽をいきなりヘッドホンで聞かされたような感じだよ。」
「うわ、それはすごいね。耳がどうかしちゃうね。」
桃子はそう言いながら思わず両耳をふさいだ。
「そうか、それほどの思いで桜さんが門倉さんの許へ行ったってことは、よっぽど門倉さんのことを強く思っているのね。」
そう遼子が解釈すると、それをさらに璃鴎は修正した。
「それもあるけど、きっと門倉さんに大きな危機が迫っているんだよ。でも、桜さんが守りに入ったから、僕らの力もこれで役立てられるよ。」
「璃鴎、そんなにあの奥さんは力が強いの。」
「門倉の小母さんは何かどうしてもかなえたい願望を持っているのかもしれない。そして、その思いが神社の神様の力と結び付いて、守護霊を封印するほどになったんじゃないかな。門倉の小母さんもそんなふうにはっきり意識していないと思うけど、偶然が重なってそうなったんだよ。」
「守護霊?」と桃子が訊いた。
「桜さんのことだよ。桜さんは亡くなってからずっと門倉の小父さんを守っていたんだ。」
「璃鴎君、どうしてそんなことがわかるの?」
「さっき、僕が倒れていた時、桜さんが僕に教えてくれたんだ。」
璃鴎が答えると桃子はさらに疑問をぶつけた。
「だって、桜さんは門倉さんのところへ行ったんでしょ?」
「そうなんだけど、霊はここと向こうと同時に存在できるんだよ。例えて言えば電波みたいなものかな。インターネットのサイトは同時にいろいろな場所で開けるでしょ。」
桃子は感心して何度もうなずいた。
「璃鴎君、説明が上手だね。本当に君はすごい子だよ。」
璃鴎は、桃子の大きな美しい目で穴の開くほど見つめられて照れていた。
遼子は運転しながら左手でお札を持ち上げた。
「このお札が桜さんの霊を封じ込めていたというのね。茉梨ちゃん、ちょっと開けてみてくれない。」
遼子は、お札の包みを茉梨絵に開けさせた。
私はケータイ越しにそれをとがめた。
「お札をそんなふうに扱っちゃまずいんじゃないか。」
しかし、茉梨絵の耳には入らなかったようで、彼女は中身をすっかり出してしまった。
「何これ? すごいよ。」
「何? 何?」