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13

 「門倉さん。門倉さんがどうして?」
 「璃鴎が発案した、心霊シャットダウン装置を造ってもらったの。息子に言わせると、霊気って一種の電磁波なんですって。私もよくわからないけど、彼が調べた、特定の電磁波だけを遮断すれば、その場所だけ、幽霊は入って来られないらしいのよ。門倉さんは、会社で通信機器の開発をしているから、二つ返事で引き受けて下さったのよ。ほら、こっちにも二基設置されているでしょう。」
 遼子が窓側の壁の一方の隅を指差すと、ゲートがあった。もう一方にもある。
 「つまり、この部屋の半分は、四隅にゲートが設置されていて、その中は電磁波で守られているというわけなの。だから、ゆきちゃん、あったことを全部言っちゃっていいのよ。」
 その説明を聞いて、安心したのか、ゆっくりと小雪は話を始めた。
 「私の部屋から古い大学ノートが出て来たんです。」
 遼子の上手な相槌に、小雪は身辺に起こった異常事を残らず吐き出すことができた。
 「書かれていることが全部実現するんです。よくないことばかりですけどね。私のことも書いてあるんです。全部私に当てはまっているように思います。怖くて捨てようとすると、私を殺すと脅すんです。実家の母に来てもらおうと、電話を掛けた瞬間に、床が水浸しになりました。」
 遼子は、桃子と茉梨絵と顔を見合わせた。優しく質問する。
 「誰かがこっそり書きに来るなんてことはありえないわよね?」
 小雪は大きくかぶりを振った。
 「私の見ている時に、次々と書き足されていくんですから、そんなことはありえません。」
 「それって、インターネットとかじゃなくって、ノートなんだよね?」
 桃子がわざとおどけた調子で言った。小雪はうつむいて泣き出した。
 「信じられないよね。こんなこと。私、どうしたらいいかわからないよ。」
 泣きじゃくる小雪を、遼子はしばらくそっとしておいた。桃子が遼子にすまなそうな顔をした。遼子は、いいのよと言うように、首を左右に振った。やがて遼子は言った。
 「よし、そのノートを見に行こう。」
 小雪は、怖くてここから動きたくないと言ったが、遼子はまもなく小雪を承知させた。簡易心霊バリアーをつけてあげたのだ。何箇所か、クリップで衣服に留めるタイプの心霊バリアーも、璃鴎の発案で、門倉に製造してもらったものだ。
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 ノベル
◆ 執筆年 2008年2月11日