ノベル
28
「ああ、それで高岡さんの家がずっと新潟にあるかどうか訊いたのね。」
遼子は手を打った。
璃鴎は母親の方を向き、いつも母親に対して話をするときの口調で説明を続けた。
「そうなんだ、お母さん。だけど、高岡さんの家は代々新潟に住みついていた。そうなると高岡さんが奈良県の方言を使うはずがない。それならば、あの日記を書いたのは、高岡さんではなくて、奈良県出身の誰か別の人だ。そう思って賃貸台帳の住所録を見ると、奈良県出身の佐藤隆弘さんという人がいるのに気づいた。佐藤隆弘。通常のイニシャルの表し方では、TSとなるので、ノートに記されたSTにはならない。ここで考えなければならないのは、イニシャルを記すときの方法なんだ。」
「イニシャルを記すときの方法?」
桃子が質問したので、今度は璃鴎は桃子の方を向き、話し方も桃子に対するものに変えた。
「ええ、日本人が普段使うイニシャルは名前を先、苗字を後にする欧米式に倣ったものなんです。このやり方は、苗字を言ってから名前を言う、日本人の名乗り方と逆で、よく考えるとこっちの方が日本人には不自然なんですよ。それなので、中には苗字を先、名前を後という日本式でイニシャルを記す人も存在します。そう考えると、佐藤隆弘さんが、あのノートに日本式でイニシャルを書き記していたということもありえると思うんです。もうそれ以外に手掛かりが見つからなかったので、僕はこの人のことを調べてみようと思いました。父も協力してくれました。フォーラムでの発表を終えると、急な用が入ってしまったのでと言い訳をしてくれて、すぐさまタクシーで佐藤さんの家に向かってくれたんです。」
「住所を覚えちゃったの?」
茉梨絵は目を見張った。
「ええ。番地の数字だけははっきり覚えて、それ以外はなんとなく頭に入れておきました。家に帰ってから、自分の部屋のパソコンで地名を検索して確かめて、書き取っておいたんです。」
「本当にこの子は頭がいいなあ。」
桃子は彼の頭を抱えて撫で回した。
遼子は手を打った。
璃鴎は母親の方を向き、いつも母親に対して話をするときの口調で説明を続けた。
「そうなんだ、お母さん。だけど、高岡さんの家は代々新潟に住みついていた。そうなると高岡さんが奈良県の方言を使うはずがない。それならば、あの日記を書いたのは、高岡さんではなくて、奈良県出身の誰か別の人だ。そう思って賃貸台帳の住所録を見ると、奈良県出身の佐藤隆弘さんという人がいるのに気づいた。佐藤隆弘。通常のイニシャルの表し方では、TSとなるので、ノートに記されたSTにはならない。ここで考えなければならないのは、イニシャルを記すときの方法なんだ。」
「イニシャルを記すときの方法?」
桃子が質問したので、今度は璃鴎は桃子の方を向き、話し方も桃子に対するものに変えた。
「ええ、日本人が普段使うイニシャルは名前を先、苗字を後にする欧米式に倣ったものなんです。このやり方は、苗字を言ってから名前を言う、日本人の名乗り方と逆で、よく考えるとこっちの方が日本人には不自然なんですよ。それなので、中には苗字を先、名前を後という日本式でイニシャルを記す人も存在します。そう考えると、佐藤隆弘さんが、あのノートに日本式でイニシャルを書き記していたということもありえると思うんです。もうそれ以外に手掛かりが見つからなかったので、僕はこの人のことを調べてみようと思いました。父も協力してくれました。フォーラムでの発表を終えると、急な用が入ってしまったのでと言い訳をしてくれて、すぐさまタクシーで佐藤さんの家に向かってくれたんです。」
「住所を覚えちゃったの?」
茉梨絵は目を見張った。
「ええ。番地の数字だけははっきり覚えて、それ以外はなんとなく頭に入れておきました。家に帰ってから、自分の部屋のパソコンで地名を検索して確かめて、書き取っておいたんです。」
「本当にこの子は頭がいいなあ。」
桃子は彼の頭を抱えて撫で回した。