あなたに夢中

18
だれかに肩をたたかれて、振り向くと温子が立っていた。いつもの穏やかな表情にもどっていた。内側の穏やかさが外見を美しくさせる。利発さと意志の強さも外見を形作っていた。
「なにやってるの?」
温子は龍一の向かいに腰をおろした。
「海を見ていたんだよ」
「それだけ?」
「空も見ていた」
「やだもう」
温子は笑いながら手でぶつ振りをした。
「さっきはごめんね」
温子が小さな声でそっと言った。非常に丁寧な言葉の置き方だった。たぶん、テーブルの中央にそろえて置いて、角もやすりできれいに磨いてあるだろう。
「いや、おれのほうこそ」
龍一は温子の言葉の隣に自分の言葉を置いたけれども、龍一の言葉はこっちが突き出たり、あっちがへっこんでいたりしていた。しかも、持ち上げたらぽろぽろ崩れそうだ。
「ねえ、龍一君」
温子の言葉がテーブルのうえの龍一の言葉に優しく重なって、少しは安定がよくなるようにまとめはじめた。
「なに?」
龍一の言葉はテーブルのうえでそわそわしていた。それを温子の言葉が力強くひっぱる。
「わたし、行く先をきかないわ」
「…………」
「龍一君がわたしを連れて行きたいところなんだから、黙ってついていけば間違いないわ」
「…………ありがとう」
「海きれい?」
「うん。空もきれいだよ」
「ははっ、じゃあいっしょに見ようか」
龍一の言葉は、温子の言葉にきちんと身だしなみを整えられて、おとなしくテーブルに腰掛けた。
「なにやってるの?」
温子は龍一の向かいに腰をおろした。
「海を見ていたんだよ」
「それだけ?」
「空も見ていた」
「やだもう」
温子は笑いながら手でぶつ振りをした。
「さっきはごめんね」
温子が小さな声でそっと言った。非常に丁寧な言葉の置き方だった。たぶん、テーブルの中央にそろえて置いて、角もやすりできれいに磨いてあるだろう。
「いや、おれのほうこそ」
龍一は温子の言葉の隣に自分の言葉を置いたけれども、龍一の言葉はこっちが突き出たり、あっちがへっこんでいたりしていた。しかも、持ち上げたらぽろぽろ崩れそうだ。
「ねえ、龍一君」
温子の言葉がテーブルのうえの龍一の言葉に優しく重なって、少しは安定がよくなるようにまとめはじめた。
「なに?」
龍一の言葉はテーブルのうえでそわそわしていた。それを温子の言葉が力強くひっぱる。
「わたし、行く先をきかないわ」
「…………」
「龍一君がわたしを連れて行きたいところなんだから、黙ってついていけば間違いないわ」
「…………ありがとう」
「海きれい?」
「うん。空もきれいだよ」
「ははっ、じゃあいっしょに見ようか」
龍一の言葉は、温子の言葉にきちんと身だしなみを整えられて、おとなしくテーブルに腰掛けた。