豹陣
-中里探偵事務所-

探偵
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14

「車は昼ごろお戻りになるのですか」と亜沙子は、話はまだ始まったばかりだという目で堀内を見た。
 皆川は顔をしかめた。コンナトコニ長居シタッテムダデスヨ。彼の顔はそう語っていた。
「はい、もう戻ってきましたよ」と堀内は広い胸を張った。「どうぞ、ご覧になってください」
 堀内は立ちあがって、二人を駐車場に案内した。自動ドアを出ると、薄紅色の小さな花を咲かせた花壇のそばを通って、従業員用の小さな駐車場に出た。洗いたてのトヨタ・ランドクルーザーが3214という数字をこちらに向けていた。
「何か気づきましたか」
 じっと車を観察している亜沙子に皆川が訊いた。
「タイヤが新しいわね」亜沙子は振り向いて堀内に言った。「タイヤ交換もされたのですか」
「ええ、それが何か」堀内は、〝どうでもいいことを訊くなよ〟と言いたげだった。
 亜沙子はひるまずに車検に関して一通りのことを確認した。しかし、これといってひっかかる点は何もなかった。タイヤも溝が浅くなったので、ディーラーからの提案で新しいタイヤを発注することになった。こうに言われると、もう亜沙子には質問すべきことが思いつかなかった。
 皆川がしびれをきらして口を挟み、聞き込みを終えることになった。
 亜沙子はトイレを借りた。そして譲に電話をした。
「あなたが気にしているからかなり意識して堀内を尋問したけど、気になることは何もなかったわよ」
 譲はタイヤ交換に興味を示した。
「ディーラーにじかに確認してみてくれる? もしかしたら交換する前のタイヤが残っているかもしれないからそれも確かめて」
 亜沙子は皆川の顔を思い浮かべながら、沈んだ声で返事をした。
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 豹陣-中里探偵事務所-
◆ 執筆年 2015年8月