豹陣
-中里探偵事務所-
24
「いくらアリバイがなくたって、有力な証拠がないんだから、もっと慎重にやんなきゃ。自白させることばっかり考えていないで、もっとできることを考えましょうよ」
「だって、どう考えたってあいつ怪しいじゃないですか。はじめからそっぽ向いて黙りこくってるんですよ。やましいことがなければあんな態度取らないんじゃないですか」
「皆川さんがのっけから大声出すからよ」
亜沙子の生真面目な目を皆川は黙って見つめた。亜沙子は視線をそらした。そしてあることに思い当たった。彼女は明るい顔を皆川に向けた。
「皆川さん、増田の写真を事故車両の目撃者に見せてみましょうよ」
「事故車両の目撃者?」皆川は2センチぐらいに育った灰をとんとんとはたいた。
「ほら、若い女の人がいたじゃない。事故の直前に被害者がSUVの助手席から降りたあと、発進したSUVの運転席に乗っていた男の後ろ姿を見たって言ってたでしょう」
「ああ」
「それから、第一発見者の大塚さんも、写真を見れば何か思い出すかもよ」
「まあ、それはやっておいても悪くないかもね」
亜沙子がイスから立ち上がると、皆川も重そうに体を持ち上げた。
足利警察署を出て、足利女子高校付近から現場方面へ向かっていくと、両崖山に霧がかかっているのが見えた。
目撃者の若い女性の住んでいるアパートに到着すると辺りは暗くなっていた。
二人は二階に昇り、女性の部屋のドアチャイムを鳴らした。
勤め先から戻っていた女性は二人の用向きにすぐ応じ、ドアを開けた。機械メーカーで事務員をやっているらしい。制服にそのメーカーのロゴが入った名札を付けていた。
「うーん、違うかなあ」と、女は首をかしげた。「暗かったからよくは見えなかったけど、もっときちんとした人みたいだったかな。なんかね、服装がスーツっぽかったよ」
「そうですか、どうもありがとうございました」
亜沙子と皆川はぺこりと頭を下げて車に戻った。
「どう思います?」
皆川はインプレッサをバックさせながら答えた。「前にも言ったかもしれないですけど、あの女が見た男がそのとき停まっていたSUVの持ち主だとしても、そのSUVが被害者をひき殺したとは限りませんよ」
「それはそうなんだけど、事故の直前に立ち話してたんだから、可能性は高いわよ。本当に増田がやったのかな」
皆川は何も言わずに荒っぽく発進させた。
「だって、どう考えたってあいつ怪しいじゃないですか。はじめからそっぽ向いて黙りこくってるんですよ。やましいことがなければあんな態度取らないんじゃないですか」
「皆川さんがのっけから大声出すからよ」
亜沙子の生真面目な目を皆川は黙って見つめた。亜沙子は視線をそらした。そしてあることに思い当たった。彼女は明るい顔を皆川に向けた。
「皆川さん、増田の写真を事故車両の目撃者に見せてみましょうよ」
「事故車両の目撃者?」皆川は2センチぐらいに育った灰をとんとんとはたいた。
「ほら、若い女の人がいたじゃない。事故の直前に被害者がSUVの助手席から降りたあと、発進したSUVの運転席に乗っていた男の後ろ姿を見たって言ってたでしょう」
「ああ」
「それから、第一発見者の大塚さんも、写真を見れば何か思い出すかもよ」
「まあ、それはやっておいても悪くないかもね」
亜沙子がイスから立ち上がると、皆川も重そうに体を持ち上げた。
足利警察署を出て、足利女子高校付近から現場方面へ向かっていくと、両崖山に霧がかかっているのが見えた。
目撃者の若い女性の住んでいるアパートに到着すると辺りは暗くなっていた。
二人は二階に昇り、女性の部屋のドアチャイムを鳴らした。
勤め先から戻っていた女性は二人の用向きにすぐ応じ、ドアを開けた。機械メーカーで事務員をやっているらしい。制服にそのメーカーのロゴが入った名札を付けていた。
「うーん、違うかなあ」と、女は首をかしげた。「暗かったからよくは見えなかったけど、もっときちんとした人みたいだったかな。なんかね、服装がスーツっぽかったよ」
「そうですか、どうもありがとうございました」
亜沙子と皆川はぺこりと頭を下げて車に戻った。
「どう思います?」
皆川はインプレッサをバックさせながら答えた。「前にも言ったかもしれないですけど、あの女が見た男がそのとき停まっていたSUVの持ち主だとしても、そのSUVが被害者をひき殺したとは限りませんよ」
「それはそうなんだけど、事故の直前に立ち話してたんだから、可能性は高いわよ。本当に増田がやったのかな」
皆川は何も言わずに荒っぽく発進させた。