豹陣
-中里探偵事務所-

59
私は車を停めました。急に不安がやってきました。宮原の体がバンパーに当たって、交換しなければならないほど破損したかもしれない、ライトが割れたかもしれない。感触と音ではそういう感じはしなかったのですが、見てみなければわかりません。それよりももっと心配なのは宮原が生きているかもしれないということです。少しでも宮原が動いていれば、完全に動かなくなるまで車で轢く必要があると思いました。私は外にでて、冷静に宮原の体を観察しました。完全に事切れていました。もちろん脈もありませんでした。バンパーやライトもなんともないようでした。もちろん、営業所にもどったら詳しく見てみなければなりません。しかし、もしへこんでいたら、駐車中にだれかにぶつけられたから、無償で交換すると説明するつもりでした。その必要がないとわかり、私はやはりホッとしました。次に私は、宮原の右肩から左脇にかかっていたバッグを開きました。私の通帳と金が入っている封筒がありました。あまりぐずぐずしているわけにはいかないので、私はその封筒だけ抜き取って、バッグのファスナーを閉じました。そして、指紋が残らないように、ハンカチでファスナーのつまみなどをふき取りました。刑事ドラマで得た知識が役に立ったのです。私は急いで車に乗り、発進させました。ローソンでコーヒーを買い、駐車場で飲みながら、通帳や金を調べました。通帳は三つすべてありました。その他にも宮原と私につながりがあることを示す書類などがいくつか入っていました。金も私が持ってきたままの二百万円がそっくりありました。宮原は約束したことは律儀に守る男だったのです。私はコーヒーを飲み終えると営業所にもどり、ランドクルーザーを洗い、タイヤを交換しました。あとは中里様がご存じの通りです」
関が譲の方を見て、口を閉じた。
譲は関にもういちど口を開いてほしかった。
「約束を守っていただき、事件の一部始終を教えていただきまして、ありがとうございました。しかし、申し訳ないのですが、私はもう一つ気になっていることがあるのです。よろしければ、そのことについても教えていただけないでしょうか」
関は意外な顔をした。
「なんでしょうか? もうすっかりお話ししたと思いますけど」
「はじめの事故についてなんですが、そのときになにか気になるものは見ませんでしたか。」
「気になるもの、ですか」
「関さんが運転していた車に人を押しやった人がいるかもしれません」
「え? それはどういうことですか」
譲は少し考えてからいった。
関が譲の方を見て、口を閉じた。
譲は関にもういちど口を開いてほしかった。
「約束を守っていただき、事件の一部始終を教えていただきまして、ありがとうございました。しかし、申し訳ないのですが、私はもう一つ気になっていることがあるのです。よろしければ、そのことについても教えていただけないでしょうか」
関は意外な顔をした。
「なんでしょうか? もうすっかりお話ししたと思いますけど」
「はじめの事故についてなんですが、そのときになにか気になるものは見ませんでしたか。」
「気になるもの、ですか」
「関さんが運転していた車に人を押しやった人がいるかもしれません」
「え? それはどういうことですか」
譲は少し考えてからいった。