豹陣
-中里探偵事務所-

64
「な、なぜ、こんなところに……?」
スピーカーから指示がでる。
「そこのオートバイ、左に寄せて停止しなさい」
博之は素直に従った。単なるスピード違反なら、罰金を払えば終わる。ここで逃げたら大変だ。いろいろと調べられるだろう。焦っている割にはけっこう冷静に判断できたなとおもいながら、停まったバイクにまたがって雨に打たれていると、制服を着た警官が近づいてきた。警官の指示に従い、パトカーまで歩く。渡されたタオルでライダースーツの雨をふき取り、パトカーの後部座席に座る。右にスーツの男が座っている。左に制服警官が座り、ドアを閉めた。制服警官が切符を切る。二七キロオーバーだった。少し痛い金額だが、仕方がない。記入が済んだので、帰らせてもらえるのかとおもったが、二人ともなにもいわない。運転席の制服警官も無言だ。スピード違反摘発のためのパトカーにいつも三人も乗っているのだろうか。二人で十分な気がした。それに、三人のうちの一人はなぜスーツを着ているのだろうか。ひょっとして刑事じゃないのか。
スーツが前を向いたまま口を開いた。
「足利の方がこんなところでなにをしていたんですか」
博之は話せないこと以外はなるべく真実を話した。
「知人の家に用事があったので宇都宮までいったんです」
「この雨の中をこんな山の中を通りかかったのはなぜですか」
「せっかく宇都宮まできたから、少し景色のいいところを走ろうとおもいまして」
「こんな雨の中をですか」
「宇都宮をでたときはほとんど降ってなかったんですよ」
「ああ、そういえばそうでしたね」
博之は身じろぎした。
「あの、もう帰ってもいいでしょうか」
初めてスーツの男が振り向いた。凄味のある顔だった。体格もいい。スポーツ選手か高校の運動部の顧問のようだった。
「ええ、もちろんいいですよ。すみませんね、引きとめてしまいました」
左側の制服警官がドアを開けた。
「あ、ちょっと、いいですか」
「なんでしょうか。まだなにかありますか」
博之は顔をしかめた。
「ちょっと、見てもらいたいものがあるんですが」
スピーカーから指示がでる。
「そこのオートバイ、左に寄せて停止しなさい」
博之は素直に従った。単なるスピード違反なら、罰金を払えば終わる。ここで逃げたら大変だ。いろいろと調べられるだろう。焦っている割にはけっこう冷静に判断できたなとおもいながら、停まったバイクにまたがって雨に打たれていると、制服を着た警官が近づいてきた。警官の指示に従い、パトカーまで歩く。渡されたタオルでライダースーツの雨をふき取り、パトカーの後部座席に座る。右にスーツの男が座っている。左に制服警官が座り、ドアを閉めた。制服警官が切符を切る。二七キロオーバーだった。少し痛い金額だが、仕方がない。記入が済んだので、帰らせてもらえるのかとおもったが、二人ともなにもいわない。運転席の制服警官も無言だ。スピード違反摘発のためのパトカーにいつも三人も乗っているのだろうか。二人で十分な気がした。それに、三人のうちの一人はなぜスーツを着ているのだろうか。ひょっとして刑事じゃないのか。
スーツが前を向いたまま口を開いた。
「足利の方がこんなところでなにをしていたんですか」
博之は話せないこと以外はなるべく真実を話した。
「知人の家に用事があったので宇都宮までいったんです」
「この雨の中をこんな山の中を通りかかったのはなぜですか」
「せっかく宇都宮まできたから、少し景色のいいところを走ろうとおもいまして」
「こんな雨の中をですか」
「宇都宮をでたときはほとんど降ってなかったんですよ」
「ああ、そういえばそうでしたね」
博之は身じろぎした。
「あの、もう帰ってもいいでしょうか」
初めてスーツの男が振り向いた。凄味のある顔だった。体格もいい。スポーツ選手か高校の運動部の顧問のようだった。
「ええ、もちろんいいですよ。すみませんね、引きとめてしまいました」
左側の制服警官がドアを開けた。
「あ、ちょっと、いいですか」
「なんでしょうか。まだなにかありますか」
博之は顔をしかめた。
「ちょっと、見てもらいたいものがあるんですが」