烏賊がな
-中里探偵事務所-
9
「あっ、大塚さん、先生にご用がおありなんじゃないですか」
悦子が気づかった。
「いえ、私は別に急いでいないから、気にしないでください」
「先生に質問にきたんですか」早紀がきいた。
「ええ、さっきの講義のことでうかがいたいことがあったので」
「えらいなあ」と悦子。
「大塚さんって、聴講生ですよね」早紀がきいた。「大学はどちらを卒業されたんですか」
「明治大学の文学部です」
「英文科ですか」
「英文科に入りたかったんですけど、合格できなくて、文芸メディアも受けたらそちらは合格させていただいたんで、そこを卒業しました。だから、英文学にはもともと興味があるんです」
「えー! 文芸メディアを卒業されたんですか」悦子がいった。「私、小説とか書くの憧れてたんですけど。大塚さんもそういった方面を目指されていたんですか?」
「まあ、小さいころは、絵本作家とか漫画家とか、なれたらいいなあ、ぐらいにはおもっていましたけど、さすがに大学に入るときはもっと現実路線を考えて、出版社とか放送関係とかに進めればいいなあとおもっていましたよ。結局、だめでしたけどね」
早紀がコーヒーを飲みほして、カップを流しに運んだ。
「悦子、そろそろ学食にいかない?」
「そうね、あまり混まないうちにいっとこうか」
悦子が腰を上げかけると、鴻上がいった。
「君たち、午後は講義があるのかい」
「ええ、私は四コマ目がありますけど」と悦子。
「私も」
「そうか。三コマ目は二人ともないんだな。僕は今日はもう講義はないから、もしよかったら、いっしょに昼飯を食べないか。三宮にうまいイタリアンの店があるんだ」
「えー、いいんですかー」二人ともうれしそうに声をあげた。
鴻上は優果の方を見た。
「大塚さんも、いっしょにいかがですか」
優果は上目遣いに鴻上を見て微笑んだ。
「え、でも、ゼミの学生でもないのにごいっしょして構わないのですか」
「ぜんぜん構わないよ。ねえ、君たち」
「そうですよ、大塚さんもいっしょにいきましょうよ」
優果は遠慮がちに誘いを受けいれた。三人が立ちあがって、ドアに向かうと、優果も立ちあがって、コートを羽織った。
悦子が気づかった。
「いえ、私は別に急いでいないから、気にしないでください」
「先生に質問にきたんですか」早紀がきいた。
「ええ、さっきの講義のことでうかがいたいことがあったので」
「えらいなあ」と悦子。
「大塚さんって、聴講生ですよね」早紀がきいた。「大学はどちらを卒業されたんですか」
「明治大学の文学部です」
「英文科ですか」
「英文科に入りたかったんですけど、合格できなくて、文芸メディアも受けたらそちらは合格させていただいたんで、そこを卒業しました。だから、英文学にはもともと興味があるんです」
「えー! 文芸メディアを卒業されたんですか」悦子がいった。「私、小説とか書くの憧れてたんですけど。大塚さんもそういった方面を目指されていたんですか?」
「まあ、小さいころは、絵本作家とか漫画家とか、なれたらいいなあ、ぐらいにはおもっていましたけど、さすがに大学に入るときはもっと現実路線を考えて、出版社とか放送関係とかに進めればいいなあとおもっていましたよ。結局、だめでしたけどね」
早紀がコーヒーを飲みほして、カップを流しに運んだ。
「悦子、そろそろ学食にいかない?」
「そうね、あまり混まないうちにいっとこうか」
悦子が腰を上げかけると、鴻上がいった。
「君たち、午後は講義があるのかい」
「ええ、私は四コマ目がありますけど」と悦子。
「私も」
「そうか。三コマ目は二人ともないんだな。僕は今日はもう講義はないから、もしよかったら、いっしょに昼飯を食べないか。三宮にうまいイタリアンの店があるんだ」
「えー、いいんですかー」二人ともうれしそうに声をあげた。
鴻上は優果の方を見た。
「大塚さんも、いっしょにいかがですか」
優果は上目遣いに鴻上を見て微笑んだ。
「え、でも、ゼミの学生でもないのにごいっしょして構わないのですか」
「ぜんぜん構わないよ。ねえ、君たち」
「そうですよ、大塚さんもいっしょにいきましょうよ」
優果は遠慮がちに誘いを受けいれた。三人が立ちあがって、ドアに向かうと、優果も立ちあがって、コートを羽織った。