烏賊がな
-中里探偵事務所-
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場面29
ぼくはロマンチックな人間なんだ。暗い夜に泣いている声を聞くと、なんだろうと見に行く。そんなことをしていては金にならない。原

『『長いお別れ』の魅力』
譲はウイスキーを飲みながら、メールチェックをはじめた。今日はボウモアではない。ワイルドターキーだ。ワイルドターキーはストレートで飲むのが好きだった。優果からメールがきていた。メールを一太郎にまとめたものに、新着の優果のメールをコピーした。頭の中を整理するために、もういちど最初から優果のメールを熟読することにした。確信もしくは感触をつかみたかったからだ。
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中里所長
メール、ありがとうございました。
久々に栃木を離れ、神戸の街の灯を堪能しています。
高校で1年のときに同級になった子が神戸大学に在籍していたのは、とても運のよいことでした。彼女に連絡をすると、協力してくれると返事をもらいました。
とりあえず彼女に会って、学内での被害者の様子をきいてみようと思っています。
それではまた後ほど。
大塚優果
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初めのメールだった。連絡は手紙でもメールでもすべて、中里所長あてにだすよう指示してあった。
神戸大学につてがあってよかった。もし殺人だとしたら男女交際のもつれが、原因としてはもっともありそうだった。次のメールにそれに関することが書かれていたはずだ。
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中里所長
お世話になります。
久々の大学の講義は面白いです。もぐり込んでいろいろ聞いています。
山野聡子(例の高校のときに同級だった子です)はとても協力的で、アパートでいっしょに暮らすことを面白がってくれています。交際している男性はもちろんいないし、卒論の準備でそれどころではないといっています。所長のことを話したら、とても興味を持って、いちど会ってみたいといっていました。もちろん変な意味ではありませんが。
彼女は被害者の女性を直接は知らないけど、噂はなんとなく聞いたことがあるといっていました。やはり所長の想像が当たっているかもしれません。
もう少しほかの学生にも当たってみたいとおもいます。
それではまた後ほど。
大塚優果
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次のメールをみた。