烏賊がな
-中里探偵事務所-

探偵
prev

10

場面29

ぼくはロマンチックな人間なんだ。暗い夜に泣いている声を聞くと、なんだろうと見に行く。そんなことをしていては金にならない。
りょう
『『長いお別れ』の魅力』

 譲はウイスキーを飲みながら、メールチェックをはじめた。今日はボウモアではない。ワイルドターキーだ。ワイルドターキーはストレートで飲むのが好きだった。優果からメールがきていた。メールを一太郎にまとめたものに、新着の優果のメールをコピーした。頭の中を整理するために、もういちど最初から優果のメールを熟読することにした。確信もしくは感触をつかみたかったからだ。

********************
中里所長

メール、ありがとうございました。

久々に栃木を離れ、神戸の街の灯を堪能しています。

高校で1年のときに同級になった子が神戸大学に在籍していたのは、とても運のよいことでした。彼女に連絡をすると、協力してくれると返事をもらいました。

とりあえず彼女に会って、学内での被害者の様子をきいてみようと思っています。

それではまた後ほど。
大塚優果
********************

 初めのメールだった。連絡は手紙でもメールでもすべて、中里所長あてにだすよう指示してあった。
 神戸大学につてがあってよかった。もし殺人だとしたら男女交際のもつれが、原因としてはもっともありそうだった。次のメールにそれに関することが書かれていたはずだ。

********************
中里所長

お世話になります。

久々の大学の講義は面白いです。もぐり込んでいろいろ聞いています。

山野聡子(例の高校のときに同級だった子です)はとても協力的で、アパートでいっしょに暮らすことを面白がってくれています。交際している男性はもちろんいないし、卒論の準備でそれどころではないといっています。所長のことを話したら、とても興味を持って、いちど会ってみたいといっていました。もちろん変な意味ではありませんが。

彼女は被害者の女性を直接は知らないけど、噂はなんとなく聞いたことがあるといっていました。やはり所長の想像が当たっているかもしれません。

もう少しほかの学生にも当たってみたいとおもいます。

それではまた後ほど。
大塚優果
********************

 次のメールをみた。
next

【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 烏賊がな-中里探偵事務所-
◆ 執筆年 2017年9月