烏賊がな
-中里探偵事務所-

探偵
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中里所長

お世話になります。

今日は自分から鴻上教授の研究室に質問に行きました。

研究室の二人の学生が教授にランチに誘われました。私もいっしょに誘われました。

二人の学生と仲良くなったので、それとなく被害者のことをきいてみたいとおもいます。

それではまた後ほど。
大塚優果
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 最後のメールだった。
 譲は返事を書きはじめた。

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大塚優果様

お世話になります。

二人の学生には是非話をきいてみてください。

そのうち昼休みに学食であえるでしょう。偶然見かけたふりをして、同席させてもらってください。

教授と被害者に何か関係があったのか、とはきかないほうがいいでしょう。

「神戸大学って、8月ごろ、交通事故で亡くなった女子大生がいたって、テレビで騒がれてましたよね。栃木でもあの事故のことで持ちきりでしたよ」

なんていうのはどうでしょうか。

それではまた報告をお待ちしています。
中里守
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 譲はメールを送信すると、優果からのメールに添付されたファイルをコピーしたフォルダを開いた。優果が録音した音声ファイルだった。ワイルドターキーを飲みながら音声をきく。
 鴻上教授との会話が三回分はいっていた。途中でやめようとおもったが、とめられず、最後まできいてしまった。気がついたらワイルドターキーを飲みすぎていた。
 明日はまた早く起きて仕込みをしなければならない。歯を磨いて、寝室にいく。亜沙子はぐっすり寝ていた。隣にもぐり込み、目をつぶって優果のことを考えていた。優果はうまく調べられるだろうか。自分が直接動けないのが歯がゆかった。動くのが亜沙子でなく優果であることも歯がゆかった。しかし、優果はいまのところよくやっている。まだ優果のことがよくわからないから、じれったくなるだけなのだろう。とにかく、いまは待つしかない。そのときがこなければ、ものごとはそこに収まらないのだ。
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 烏賊がな-中里探偵事務所-
◆ 執筆年 2017年9月