烏賊がな
-中里探偵事務所-
26
「先生が、夕食の予定がないならいっしょに食べませんかと誘ってくれたので、あまり深く考えることなくついていってしまったんです。いわれてみれば軽率なことをしたとおもいます。でも、ほんとうにそれ以上の意味はないんです」
陽菜は優果の顔を黙ってじっとみていた。
「私、あなたのことがほんとうに心配なの」
「ランチのときにいってたことですか」
「そうよ。私、敵討(かたきう)ちしたいの」
「敵討ち?」
「そう、敵討ち。恵利の敵討ち。あっ、恵利って、その事件の犠牲者。私、親友だったの」
「それは、ほんとうにお気の毒なことで」
優果は紅茶のカップを置いた。
「でも、敵討ちって、いったいどうやって」
「まずは、証拠を見つけなきゃね」
陽菜は上を向いて口をあけて、トリュフを落とした。口をもぐもぐさせながら、その勝ち気な眼で優果をみた。瞳がきらっとした。
「そうだ。大塚さん、証拠を見つけるのを、協力してくれませんか」
「え、でも、私、そんな、先生の身辺を探ったりできませんよ。先生がそんなひどいことをするとは、とてもおもえないし」
優果はよろこんで協力するといいたかったが、ぐっとこらえた。
「大丈夫、大塚さんならそんなに難しいことじゃないとおもうし、それに、それでもやっぱり証拠が見つからなかったら、私、もうあきらめます」
優果はしばらく、どうしようかな、などとためらう振りをしてから、
「私にできるようなことって、どんなことなんですか。もしも、根本さんがいうような証拠がでてくる可能性があるというのなら、私、お手伝いしましょうか」
といった。
「え、いいんですか? どうも、ありがとうございます。実は、私、恵利の背中を押した人を先生がだれかに頼んだとおもってるの。なにかそういう物騒なことを頼める人がいるんじゃないかしら。もしかしたら、先生のパソコンに履歴が残ってるんじゃないかしら」
「そんなことを私が調べられるかしら」
「調べられるとおもうわ。先生にパソコンを借りるのよ」
「でも、どうやって借りればいいでしょうか」
「なにか調べたいことがあるから、パソコンを使わせてほしいっていえばいいわ。そのときに私が研究室に入って、先生に卒論の指導をしてもらえば、何の問題もないわ」
「もし万が一見つかったらどうすればいいかしら」
「大丈夫ですよ。万が一先生が近寄ってきたら、インターネット・エクスプローラーを閉じればいいだけだから」
「なるほど、根本さんのいうとおりにすれば、うまくいくような気がしてきたわ」
優果は陽菜の目をみつめた。
陽菜は優果の顔を黙ってじっとみていた。
「私、あなたのことがほんとうに心配なの」
「ランチのときにいってたことですか」
「そうよ。私、敵討(かたきう)ちしたいの」
「敵討ち?」
「そう、敵討ち。恵利の敵討ち。あっ、恵利って、その事件の犠牲者。私、親友だったの」
「それは、ほんとうにお気の毒なことで」
優果は紅茶のカップを置いた。
「でも、敵討ちって、いったいどうやって」
「まずは、証拠を見つけなきゃね」
陽菜は上を向いて口をあけて、トリュフを落とした。口をもぐもぐさせながら、その勝ち気な眼で優果をみた。瞳がきらっとした。
「そうだ。大塚さん、証拠を見つけるのを、協力してくれませんか」
「え、でも、私、そんな、先生の身辺を探ったりできませんよ。先生がそんなひどいことをするとは、とてもおもえないし」
優果はよろこんで協力するといいたかったが、ぐっとこらえた。
「大丈夫、大塚さんならそんなに難しいことじゃないとおもうし、それに、それでもやっぱり証拠が見つからなかったら、私、もうあきらめます」
優果はしばらく、どうしようかな、などとためらう振りをしてから、
「私にできるようなことって、どんなことなんですか。もしも、根本さんがいうような証拠がでてくる可能性があるというのなら、私、お手伝いしましょうか」
といった。
「え、いいんですか? どうも、ありがとうございます。実は、私、恵利の背中を押した人を先生がだれかに頼んだとおもってるの。なにかそういう物騒なことを頼める人がいるんじゃないかしら。もしかしたら、先生のパソコンに履歴が残ってるんじゃないかしら」
「そんなことを私が調べられるかしら」
「調べられるとおもうわ。先生にパソコンを借りるのよ」
「でも、どうやって借りればいいでしょうか」
「なにか調べたいことがあるから、パソコンを使わせてほしいっていえばいいわ。そのときに私が研究室に入って、先生に卒論の指導をしてもらえば、何の問題もないわ」
「もし万が一見つかったらどうすればいいかしら」
「大丈夫ですよ。万が一先生が近寄ってきたら、インターネット・エクスプローラーを閉じればいいだけだから」
「なるほど、根本さんのいうとおりにすれば、うまくいくような気がしてきたわ」
優果は陽菜の目をみつめた。