烏賊がな
-中里探偵事務所-
31
「でも、なんだかできすぎてるような気もしますね」
優果は、そうおもってはいなかったので、ちょっと反発心がでた。
「そうでしょうか。根本さんの話しぶりには、特に不自然さはなかったですけど」
語気の強さに譲はたじろいだ。
「あ、すみません、決して根本さんを疑っているわけではないのですよ。たしかに、いま聞いた感じでも、彼女の口調に不自然さはありません。私は、ただ、世の中にはこれほど波瀾万丈の、ドラマのような人生を送る人もいるのだなあと感心しただけなのです。もちろん、陽菜さんの曾祖母の夕子さんのことですが……」
「山脇刑事はどうおもいますか。やっぱり、できすぎてるように思いますか」
優果は、このことについての自分の感じ方が正しいかどうか、別の人から意見をききたくなった。
山脇巡査長は、日ごろから余計なことをいわない男であるが、ここまでも、ほぼ聞き役に徹していた。というより、犯罪者について意見を述べるのではなく、犯罪を犯したかもしれない者に憎しみを抱いている人物が話した内容の真偽について、いまこの時点で判断を下すということに、果たして意味があるのかどうか、疑問におもっていたので、余計に聞き役に徹するしかなかったのである。
「いや、それについては、なんとも判断できかねますね。申しわけありません」
山脇は、ペコリと頭をさげた。
「しかし、根本さんの話が事実なのかどうかについては、ある程度なら調べられるとおもいます」
「ほんとうですか」
「もっとも、調べられるといっても、曾祖母の夕子さんでしたか……その方が、実際に根本陽菜さんの曾祖母かどうかぐらいしか調べられないとはおもいますが」
「でも、それだけでもわかれば、彼女に協力していいということになりませんか」
優果の目が輝いていた。
「はい、そういうことだとおもいます」
譲は、まったく普段どおりの表情だった。
「では、そうなることを前提にして、鴻上教授のコンピュータからサイトの閲覧記録を入手する方法をシミュレーションしておきましょうか」
譲がそういうとちょうど、田中義男が盆を持って、部屋にはいってきた。
義男は、ケーキとコーヒーを三人の前に並べた。
「田中君、ありがとう」
優果は、そうおもってはいなかったので、ちょっと反発心がでた。
「そうでしょうか。根本さんの話しぶりには、特に不自然さはなかったですけど」
語気の強さに譲はたじろいだ。
「あ、すみません、決して根本さんを疑っているわけではないのですよ。たしかに、いま聞いた感じでも、彼女の口調に不自然さはありません。私は、ただ、世の中にはこれほど波瀾万丈の、ドラマのような人生を送る人もいるのだなあと感心しただけなのです。もちろん、陽菜さんの曾祖母の夕子さんのことですが……」
「山脇刑事はどうおもいますか。やっぱり、できすぎてるように思いますか」
優果は、このことについての自分の感じ方が正しいかどうか、別の人から意見をききたくなった。
山脇巡査長は、日ごろから余計なことをいわない男であるが、ここまでも、ほぼ聞き役に徹していた。というより、犯罪者について意見を述べるのではなく、犯罪を犯したかもしれない者に憎しみを抱いている人物が話した内容の真偽について、いまこの時点で判断を下すということに、果たして意味があるのかどうか、疑問におもっていたので、余計に聞き役に徹するしかなかったのである。
「いや、それについては、なんとも判断できかねますね。申しわけありません」
山脇は、ペコリと頭をさげた。
「しかし、根本さんの話が事実なのかどうかについては、ある程度なら調べられるとおもいます」
「ほんとうですか」
「もっとも、調べられるといっても、曾祖母の夕子さんでしたか……その方が、実際に根本陽菜さんの曾祖母かどうかぐらいしか調べられないとはおもいますが」
「でも、それだけでもわかれば、彼女に協力していいということになりませんか」
優果の目が輝いていた。
「はい、そういうことだとおもいます」
譲は、まったく普段どおりの表情だった。
「では、そうなることを前提にして、鴻上教授のコンピュータからサイトの閲覧記録を入手する方法をシミュレーションしておきましょうか」
譲がそういうとちょうど、田中義男が盆を持って、部屋にはいってきた。
義男は、ケーキとコーヒーを三人の前に並べた。
「田中君、ありがとう」