烏賊がな
-中里探偵事務所-

探偵
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「そこをひらいて、鴻上教授の閲覧したサイトを調べればいいんですね」
 優果は、山脇のうしろに移動した。
「ええ、まあ、そういうことなんですけれど、ちょっと、いいですか」
 山脇は、履歴の中にあるものを一つクリックした。
「こうすると、履歴のサイトを閲覧することができますが、困ったことに、閲覧記録が残ってしまいます」
「しかし、鴻上教授は閲覧記録を調べるでしょうか」
 優果は、首をかしげた。
「まあ、調べないとはおもいますが、偶然ということもありますからね」
 振り向いた山脇の眼鏡がきらっと光ったので、優果ははっとした。
「たしかに、それは、そうですね」
「そこで、履歴のサイトをひらかないで、調べる方法を考えてみました。といっても、たいしたことではないのですが」
 山脇は二つのキーを同時に押した。
「いまなにをしたのですか」
 優果はキーボードに顔を近づけた。
「プリント・スクリーンです」
「プリント・スクリーン?」
 ディスプレイに表示されているものを、そっくりそのまま写しとりたいときに使うキーであり、そのキーを押したあとに、なにか適当なファイルに貼り付ければいいのだと、山脇は説明した。彼はエクセルを立ちあげて、空白のシートにたったいま見ていたインターネット・エクスプローラーの画面を貼り付けた。
「こんなふうに、パソコンのディスプレイに表示されたものを、そのままの状態でコピーできます」
 エクセルのシートには、さっきみていたのとまったく同じ画面が貼り付けられていた。
「すごーい! 私にもやらせてもらえますか」
「もちろんです」
 山脇がさっと立ちあがると、入れ替わりに優果がパソコンの前に腰かけた。
「えっと、どのキーでしたっけ」
「プリント・スクリーンというキーがあるんですが……」
 それは、〈Prt Sc〉と表示されているキーであった。〈Print Screen〉と表示されている機種もあれば、〈Prt Scrn〉と表示されているものもあるが、山脇のノートパソコンでは、〈Prt Sc〉と表示されていた。下の段に〈Sys Rq〉とあり、上の段に〈Prt Sc〉と書いてある。〈Shift〉と同時に押すと、上の段、すなわち〈Prt Sc〉が機能するというわけである。
 山脇が指で示すやいなや、優果はキーを押した。
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 烏賊がな-中里探偵事務所-
◆ 執筆年 2017年9月