安部礼二小説作品集

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「そうです。だから、ページをひらかないで、履歴に残っているページのＵＲＬをコピーする必要があるのです」
「それが、さっきのプリントなんとかというものなんですね」
「はい。まあ、いろいろと方法があるとは思うのですが、私がよく使う方法が、プリントスクリーンなのです。で、これをどう使うかといいますと」
　山脇は〈先週〉をひらくようにいった。優果は、山脇にいわれるがまま、〈先週〉をひらき、そこにある〈tabelog〉をクリックすると、〈食べログ-ランキングと口コミで探せるグルメ…〉と、〈全国のラーメン（拉麺）［食べログ］〉の二つがでてきた。マウスポインタが、一つのサイトのＵＲＬの上に移動すると、そのサイトのＵＲＬが吹き出しとして表示された。
「こうすると、こんなふうに吹き出しがでてきます」
「しかも、ＵＲＬまで表示されますね」
「そうです」
「あっ、これをプリント・スクリーンで写しとればいいんですね」
　山脇が、うれしそうに目を細めた。
「そうです。では、その方法を実際にやっていただくことにしましょうか」
「はい」
「ところで、先ほどはいわなかったのですが、貼り付けるのはエクセル以外にも、ふさわしいものがあります。大塚さんはペイントはご存知ですか」
「いいえ、知りません」
「そうですか。ペイントも見やすいと思ったのですが、やはりエクセルにしておきましょうかね」
「はい、エクセルなら多少経験がありますから、その方がいいと思います」
「そうですね。シェークスピア研究用のエクセルシートの他のシートに貼り付けていく方が、カモフラージュもやりやすいですからね。では、エクセルに履歴ページをどんどん貼り付けていきましょう」
　山脇は、何のページでもいいのですがといいながら、ラーメン屋の履歴ページを表示した。
　優果は、山脇のレクチャーに従って、さらに小一時間、プリント・スクリーンの実地演習を行った。
　その間、譲が山脇に、ラーメンが好きなのか、と話しかけた。山脇は、意外と群馬においしい店があり、休みのたびに、あちこち食べ歩いているのだとこたえた。譲は、いろいろな店を教わり、自分のパソコンをあけて、記録したり、山脇につれていってもらう約束をしたりした。優果も、その計画に交ぜてほしいとせがんだ。
　譲と優果の目的は達せられ、その日のうちに、優果は神戸にもどった。