世界の街角から
(インド編)

5
ラール・キラーの門をくぐると、ショッピングアーケードが立ち並ぶ。浅草寺前の仲店のごときである。チャッパルが売ってないか、行きも帰りも眺めたが、なかった。チャッパルとは、インド風のサンダルである。門の前では軍人がたくさん警備していて、興ざめの感がある。しかし、中に入るとモーティマハル(真珠のモスク)に目を奪われた。シャー・ジャハーンの息子アウラングゼーブのためのモスクである。チョーハンさんは博識で、歴史や建築様式、興味深いエピソード等、詳しく話してくれるが、ヒンドゥー教徒だからイスラムの建築のモスクには絶対入らない。
「イスラムは生きるものの像を拝まないから何もないけど、入る?」などと、冷やかである。
私たちは裸足になり、モーティマハルに入る。やはり、履物を見張る人が座っている。「NO.THANK YOU.」を繰り返し、その人が指さしたところに靴を置くと面倒だから、わざと違うところに脱いで置く。こうすればチップをせがまれないで済む。
中はチョーハンさんの言ったとおり何もないが、美しかった。アイボリーに輝いていた。アラーをあがめる人たちが、額を床につけて拝んでいた。
モスクを出て、大きな宮殿がいくつか並ぶ中を抜けていく。途中、「Look at Magic‥‥‥」と書いてあるカーペットのようなものが目についた。
「あれはマジック。見るのだったら10ルピー投げてやって」
ちょっと高いかなと思ったが、チョーハンさんがそう言うし、どうせ見るのなら堂々と見ようと意を決し、10ルピー用意して見ていた。
チョーハンさんは、インドの下層の人たちに、いたわりに似た共感を持っているように思えた。それと同時に、我々外国人に貧しいインドを見せたがらないようにも感じた。旅のところどころで彼のそういう様子が見え隠れするのである。
マジックが始まった。男がカーペットの下にもぐると、カーペットの中央部分が四角く盛り上がり、二メートルほどの角柱となって宙に浮かぶ。そして、元に戻る。男が這い出てきて、カーペットを脇にどける。あとには赤い土の地面だけが残る。何か機械でも使って持ち上げていたのだろうとぼんやり思っていたが、違うみたいである。呆然としながら、10ルピーを投げていた。やはりインドは計り知れないものがある。摩訶不思議な国にやってきたという実感が湧いた。
「イスラムは生きるものの像を拝まないから何もないけど、入る?」などと、冷やかである。
私たちは裸足になり、モーティマハルに入る。やはり、履物を見張る人が座っている。「NO.THANK YOU.」を繰り返し、その人が指さしたところに靴を置くと面倒だから、わざと違うところに脱いで置く。こうすればチップをせがまれないで済む。
中はチョーハンさんの言ったとおり何もないが、美しかった。アイボリーに輝いていた。アラーをあがめる人たちが、額を床につけて拝んでいた。
モスクを出て、大きな宮殿がいくつか並ぶ中を抜けていく。途中、「Look at Magic‥‥‥」と書いてあるカーペットのようなものが目についた。
「あれはマジック。見るのだったら10ルピー投げてやって」
ちょっと高いかなと思ったが、チョーハンさんがそう言うし、どうせ見るのなら堂々と見ようと意を決し、10ルピー用意して見ていた。
チョーハンさんは、インドの下層の人たちに、いたわりに似た共感を持っているように思えた。それと同時に、我々外国人に貧しいインドを見せたがらないようにも感じた。旅のところどころで彼のそういう様子が見え隠れするのである。
マジックが始まった。男がカーペットの下にもぐると、カーペットの中央部分が四角く盛り上がり、二メートルほどの角柱となって宙に浮かぶ。そして、元に戻る。男が這い出てきて、カーペットを脇にどける。あとには赤い土の地面だけが残る。何か機械でも使って持ち上げていたのだろうとぼんやり思っていたが、違うみたいである。呆然としながら、10ルピーを投げていた。やはりインドは計り知れないものがある。摩訶不思議な国にやってきたという実感が湧いた。