世界の街角から
(インド編)

6
レッドフォートを出て、泥棒バザールと呼ばれる通りを、人やリクシャーを押しのけて進む。これまで見た中で、最も賑いのある通りであった。車の部品屋、工具屋、古着屋、映画館、鶏の肉を卸して売る店、などなど。盗まれた車が一夜にして分解されて次の日にはこのバザールで売られている。嘘か本当か知らないが、そんな由来があって泥棒バザールと呼ばれている、とチョーハンさんが教えてくれた。
「こういう街を歩きたいのだ」と思って、見入っていると、古着屋の近くに車がとまった。ジャマー・マスジッドに着いたようだ。
例によって入口には靴の番人がいる。カメラ持ち込み料5ルピー。足が見える女性はイスラムの寺院に入れない。足を隠すための布を借りるのに5ルピー。そういう注意をチョーハンさんから聞くが、妻は長い丈のワンピースを着ていたし、カメラは撮らないことにしてバッグに入れて鍵をかけて、余分なお金を払わずに中に入った。まだ今日が金曜日だからよかった。それ以外の日だと、イスラム信者以外の人間が見学するには、入場料5ルピーが必要なのだ。
モスクで礼拝する。信者がたくさん礼拝していたり、横になって休んでいるようにしていたり、方向と目的が別々にあるようで、動きがある。
棚に、経典のような本が積まれていた。つい手にとって、中を開いて読んでしまった。サンスクリット語かペルシャ語らしい文字がぎっしり詰まっていた。とたんに、肩をとんとん、と叩かれた。ぎくっとして振り向くと、背の高い、寺院に仕えていると思われる、精悍な若い男性が立っていた。
「NONE.」
口でこそ言わないが、首の動きと、柔和な顔が物語っていた。私は丁重に詫びて早足でモスクから出ていった。
そして、泥棒バザールの景色とジャマーマスジッドの塔を写真に撮った。やっぱり写真を撮らずにいられなかったのだ。5ルピー払っておけばよかったなと反省する。
チョーハンさんにお願いして中央家内工業物産店に連れていってもらった。車は狭くゴミゴミした裏通りに入っていった。彼はここの宝石商と知り合いで、私たちが買物しているあいだ、ずっとそこでくつろいでいた。彼は顔が広く、どこへいっても顔見知りがいる。
この店はあとでいろいろ見てまわった、外国人観光客向けの商店に比べると安かった。木彫りのボールペン11ルピーは悩んだあげくに買わなかった。妻はクリーム色のサンダルを300ルピーで買った。私はチャッパルというインド風サンダルを90ルピーで買った。
サリーの布二千ルピーは買わなかった。
この中央家内工業物産店では、買い方に戸惑った。店員に商品を渡すと、「上に行け」と言われる。上に行きレジで支払うと、下から運ばれた商品がすでに包まれていて、受け取ることができる。
「こういう街を歩きたいのだ」と思って、見入っていると、古着屋の近くに車がとまった。ジャマー・マスジッドに着いたようだ。
例によって入口には靴の番人がいる。カメラ持ち込み料5ルピー。足が見える女性はイスラムの寺院に入れない。足を隠すための布を借りるのに5ルピー。そういう注意をチョーハンさんから聞くが、妻は長い丈のワンピースを着ていたし、カメラは撮らないことにしてバッグに入れて鍵をかけて、余分なお金を払わずに中に入った。まだ今日が金曜日だからよかった。それ以外の日だと、イスラム信者以外の人間が見学するには、入場料5ルピーが必要なのだ。
モスクで礼拝する。信者がたくさん礼拝していたり、横になって休んでいるようにしていたり、方向と目的が別々にあるようで、動きがある。
棚に、経典のような本が積まれていた。つい手にとって、中を開いて読んでしまった。サンスクリット語かペルシャ語らしい文字がぎっしり詰まっていた。とたんに、肩をとんとん、と叩かれた。ぎくっとして振り向くと、背の高い、寺院に仕えていると思われる、精悍な若い男性が立っていた。
「NONE.」
口でこそ言わないが、首の動きと、柔和な顔が物語っていた。私は丁重に詫びて早足でモスクから出ていった。
そして、泥棒バザールの景色とジャマーマスジッドの塔を写真に撮った。やっぱり写真を撮らずにいられなかったのだ。5ルピー払っておけばよかったなと反省する。
チョーハンさんにお願いして中央家内工業物産店に連れていってもらった。車は狭くゴミゴミした裏通りに入っていった。彼はここの宝石商と知り合いで、私たちが買物しているあいだ、ずっとそこでくつろいでいた。彼は顔が広く、どこへいっても顔見知りがいる。
この店はあとでいろいろ見てまわった、外国人観光客向けの商店に比べると安かった。木彫りのボールペン11ルピーは悩んだあげくに買わなかった。妻はクリーム色のサンダルを300ルピーで買った。私はチャッパルというインド風サンダルを90ルピーで買った。
サリーの布二千ルピーは買わなかった。
この中央家内工業物産店では、買い方に戸惑った。店員に商品を渡すと、「上に行け」と言われる。上に行きレジで支払うと、下から運ばれた商品がすでに包まれていて、受け取ることができる。