世界の街角から
(インド編)

インド旅行
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ジャイプールへ

 第三日目 7月24日(土)
 チェックアウトを済まし、8時にニューデリーを発った。
 また、車と運転手が変わった。そしてこのあとは、ジャイプール、アグラ、再びニューデリーにもどるまで、インドの国産車、アンバサダーが、長い旅程の唯一の足となった。エンジンも安定しているし、外見も車内も清潔であり、クーラーが素晴らしくよくきいたので、遠距離の移動も快適であった。昨日の車はクーラーを入れるとエンジンの回転が安定しないで何度かエンストしたが、このアンバサダーはまるっきりそういう不安定感を抱かせなかった。運転手も誠実そうな若い男で、好感を持てた。
 途中、雨期なのに雨が降らない、と話したら、チョーハンさんが、洪水で人が飢えている、という新聞記事を紹介してくれた。昨日のラージ・ガートの近くだという。洪水になると、飲み水がなくなり、伝染病が増加する。汚水も流れる。
「安心して回れるところは一緒について案内するが、昨日のラージ・ガートは安全ではなかった。だから、注意しておいたのだ」と、お説教されてしまった。
 ごもっともである。ラージ・ガートの水に汚水や病原菌が流れこんでいると知ったら、確かに恐い気がした。
 国道八号線を真っ直ぐ260キロメートル、ひたすら南下した。
 途中、ドライブインに寄り、三人でチャーイーを飲んだ。払いはチョーハンさんがしてくれた。一杯2.5ルピー。デリーだと、5~10ルピー。このあとに行ったジャイプールのバザールでは、一杯1ルピーで売ってくれた。価格は、所と人による。
 アンバー城を見ながら山を下り、ややあって、ジャイプールの城内に入った。ものすごい混みようだった。デリーより道幅が狭く、かえって安心できた。人、オートリクシャー、サイクルリクシャー、バイク、自転車、牛、犬、山羊、すべてのものが入り乱れながら行き来していた。狭いだけに、デリーより活気が感じられた。ピンクシティー。その名の通り、ピンク一色であった。とても魅力的な街。
 チョーハンさんも初めてという、新しいホテルはなかなか探し出せない。通りのあちこちで道を尋ねながら、2時30分にやっとチェックインできた。メルディアンと違って、インディアンスタイル。規模が大きく、優雅。ターバンを巻いたボーイがしきりに立ち働いている。高くない建物だが、横に大きく、中庭にはプールもある。
 4時にホテルを出て、街を散策した。すぐにオートリクシャーが寄ってくるが、ホテル前は高いので、あくまで無視。広い通りに出て、リクシャーワーラーと交渉する。相場がわからないので、とりあえず、1ルピーでチャンドルポールバザールまでと言ってみた。わっと、周りのリクシャーワーラーが全部寄ってきて、賑やかになった。しかし、提示された金額が1ルピーだと知ったとたん、それは無理だと、渋い顔をする。
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 世界の街角から(インド編)
◆ 執筆年 2013年1月24日
◆ 群馬県立太田高等学校『図書館だより』の「閑話 世界の街角」に 2011年4月から2013年1月まで連載した紀行文