世界の街角から
(インド編)

インド旅行
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ジャイプール市内観光

 みんな高い値段を言ってくるのですっかり諦めかけていると、2ルピーでOKと言うワーラーがいた。本当にそれで行ってくれるのか、よく念を押して、早速乗り込むことにした。
 ワーラーは「ジュエリーに行こう」と、しつこく誘いかけてきた。信号待ちをしていると、男が一人、ワーラーの隣に滑りこんだ。しきりに話し掛けてくる。ワーラーが「UNCLE」だと言っていた。チャンドルポール門に着いた。約束どおり2ルピー払って、彼らと別れる。彼らは宝石屋に連れ込むつもりがあったので、2ルピーで応じたのだろう。当てが外れて気の毒な感じもする。
 バザールを歩いていると、通訳をしてやると、日本語で話しかけてくる男がいた。彼の言うままにドレスショップに入ることになった。パンジャビードレスを買った。値段交渉でいろいろ大変な思いをしたが、インド旅行記では、注意しないとこの話に終始してしまいがちなので、これは割愛しておこう。
 通りに出ると、子ども二人でやっているチャーイー屋があった。
「2ルピー」と言ってきたので、「高いからいらない」と、立ち去ろうとすると、「1ルピー」と、腕をつかまれた。
 チャーイーを飲み、紙幣を二枚渡して立ち去ろうとすると、二人は声を立てて笑いだした。そして、紙幣を一枚突っ返した。2ルピー札を二枚渡したのだった。律儀なこどもである。チャーイーが格別に旨かった。
 帰りはなかなかリクシャーがつかまらなかった。サイクルリクシャーのワーラーに相談してみたが、どうしても5ルピー欲しいと言う。「オートリクシャーでここまで2ルピーだったから、サイクルリクシャーなら、1ルピーで十分だろう」と言ったが、「サイクルリクシャーは体を使うからその二倍なんだ」とやられた。それで4ルピーになった。しかし、サイクルリクシャーを立ってこぐワーラーの背中を見ながら、彼の言うことはもっともだと思った。悲しい背中にチップをあげたくなった。
 私は帰り道がわからなくなってしまい、「ホテルまで行ってくれれば10ルピー出そう」と持ちかけ、「ラジャプタナ・パレス」というホテルの名前を告げると、しきりに道端の人々に尋ねまわってくれた。
 無事、ホテルの看板のある角までたどり着き、そこを左に曲ったら、こちらを向いて、「こいでみろ」と言う。もちろん、商売用の、彼のサイクルリクシャーをこげとのことである。まさか、リクシャーがこげると思わなかったので、うれしくなり、ワーラーを後ろに乗せ、早速試してみたが、前に進むのは難しい。すぐに右に左に寄って、倒れそうになる。しかし、妻とワーラーが降りて、ワーラーに教わりながら、少しずつこつをつかむ。
 約束の10ルピーを支払う際、チップを2ルピー付けた。
 ホテルのルームサービス、ジュース二杯で110ルピー、レストランのビール、ボトルで80ルピー、すべて彼に差し上げたかった。また、一緒に飲みたかった。
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 世界の街角から(インド編)
◆ 執筆年 2013年1月24日
◆ 群馬県立太田高等学校『図書館だより』の「閑話 世界の街角」に 2011年4月から2013年1月まで連載した紀行文