世界の街角から
(イギリス編)

イギリス旅行
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チェスター

 ケンダルのホテル「リバーサイド」に着き、街を歩いてみたが、まだ夕暮れ時なのに店はほとんど閉まっていた。たまに開いている店に入っても、品揃えは多くない。子供の頃を思い出した。夜になると店は閉まり、コンビニなどないから、もう何も買えなかった。日曜日はどの店も休みだった。今の日本からは想像もできないが、どうやらイギリスではほとんどの街が今でもこういう暮らしを続けているようだ。コンビニはどこにもない。不便だけど、子供の教育などを考えるとこれが本当なのかもしれない。コンビニが至る所にあり、真夜中でも買い物ができる今の日本は、世界でも極めて稀な地域みたいだ。
 なんとなく懐かしい感じのするケンダルの街並みが気に入って、早朝にも散策してみた。朝市をやっていて、面白いものがいろいろ売られていた。寒さにめげそうになっていた時だったので、衣料品をたくさんぶら下げたテントを迷わず覗いてみた。トレーナーがぶら下げられているコーナーを物色する。この際値段のことは考えないようにしようと思いながらいくつか手に取ってみると、どれもこれも値段が安い。くすんだブルーの、あまり日本風ではない、ヨーロピアンな(と勝手に思い込んだ)、胸に魚の骨のマークのあるトレーナーを買った。なじみがよく暖かかった。どうでもいい感じで服を大量にぶら下げたフリーマーケットだったが、意外と物がよかった。ちなみにこのトレーナーは2013年の現在でも着ている(妻が)。この町で有名なものと言えば、「1657」という名のチョコレート屋だろう。まだやっていなかったので、残念ながら買い物はできなかったが、趣のあるしゃれた外観をカメラに収めることができた。
 湖水地方にあるケンダルという町からほぼ真っ直ぐ南にバスは向かい、リヴァプール付近のチェスターに到着した。やはり街並みが美しかった。外壁が煉瓦色で統一されていて、美しい花々に彩られていた。ビクトリア時代からずっと同じ味で続いているソフトクリーム屋もあった。チェスターは四角い城壁に囲まれた街だ。城壁の上を歩き、街の景色を眺める。ローマ時代の遺跡を発掘しているのがよく見えた。ザ・ロウズ(商店街)に差しかかったところで上を見あげると、古雅な大時計が時を刻んでいた。
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 世界の街角から(イギリス編)
◆ 執筆年 2014年4月26日
◆ 群馬県立太田高等学校『図書館だより』の「閑話 世界の街角」に 2012年2月から2014年3月まで連載した紀行文