世界の街角から
(イギリス編)

イギリス旅行
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ロンドン その2

 ロンドン塔で、クラウン・ジュエルとホワイト・タワーを見学する。
 クラウン・ジュエルには、エドワード7世に贈呈された「偉大なアフリカの星」という名のダイアモンドがあった。500カラット以上あり、贈呈された当時、世界最大のカットダイアモンドであった。ただし、現在は世界第2位。ちなみに、現在第1位はゴールデン・ジュビリーで、これはタイ王室が所有しているとか。
 ホワイト・タワーには、鎧や剣、大砲などがたくさん展示されていた。日本の鎧かぶともあった。徳川秀忠からジェームズ1世に贈呈されたそうだ。17世紀の一時期、イギリスは徳川幕府と貿易を行っていた。1613年、ジェームズ1世は徳川家康と正式に国交を結び、長崎にイギリス商館も置いた。しかし、そのわずか十年後の1623年には、英蘭関係の悪化などの影響でイギリス商館は閉鎖し、国交も途絶える。その後鎖国によって、貿易は中国とオランダだけに制限されてしまうから、幕末期を除けば、イギリスと関係を深めた将軍は、家康、秀忠の二代限りということになる。家康はかなりハイカラで、舶来品を好んでいたようだ。
 テムズ川は、コッツウォルズの割と近くから流れ始め、オックスフォードを貫き、ロンドンで海水と混じり、その少し先で北海に流れ込む。ロンドンにはこの川にいくつかの橋が架かっているが、もっとも有名なのが、ロンドン橋とタワーブリッジだろう。『ロンドン橋落ちた』の歌のとおり、ロンドン橋は火災や自然災害、戦争などで何度も倒壊し、架け替えられている。現在のロンドン橋は1973年に開通したもので、歴史的建造物といった雰囲気は全くなく、単に道路の一部といった感じだ。しかし、ロンドン橋の方が知名度が高いため、一つ下流に架かっているタワーブリッジはよくロンドン橋に間違われるそうだ。19世紀に建造されたタワーブリッジの方が、いかにも歴史的建造物といった風貌を持っているし、ロンドンのランドマーク的存在だから、無理もない。
 隅田川のアサヒビールのビルを思い浮かべてほしい。テムズ川沿いにも、あれに負けない奇妙なビルがある。「30セント・メリー・アクス」だ。ピクルスを意味する「ガーキン」という通称で知られている。この180mのビルが、隅田川のように幅の広いテムズ川のやや奥まったところに立つのが、タワーブリッジからよく見える。タワーブリッジは、その名のとおり、グロスター大聖堂の塔みたいな、高さ40mのゴシック建築のタワーを二つ持つ。頂上付近に連絡通路があり、「ウォーク・ウェイズ」と呼ばれている。ここから見たロンドンの景観は素晴らしかった。そして、連絡通路のはるか下にはね橋があり、歩行者と車が通行している。このはね橋は、大きな船が通るときには、隅田川の勝鬨橋のように開くそうだ。もっとも勝鬨橋の方は今は開かないが。無論、タッコングとザザーンの戦いのとばっちりを受けて壊されたわけではない。
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 世界の街角から(イギリス編)
◆ 執筆年 2014年4月26日
◆ 群馬県立太田高等学校『図書館だより』の「閑話 世界の街角」に 2012年2月から2014年3月まで連載した紀行文