世界の街角から
(イギリス編)

イギリス旅行
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ロンドン その3

 ロンドン塔とタワーブリッジをあとにして、ピカデリー・サーカスの三越で昼食を食べる。和食が恋しくなったので、ここで寿司を食べることにしたのだ。オランダの空港で食べたまずい寿司に比べればおいしかったが、日本のおいしい寿司屋にはやはり及ばないので、お薦めというほどでもない。もっとも、この店はその後ラーメンバーになり、さらに、三越自体が閉店してしまったので、今はもう食べられない。しかし、三越はロンドン市内に再出店することを考えているようなので、またそのうちに、日本人が気楽に立ち寄れるロンドンのオアシスができるかもしれない。
 ピカデリー・サーカスから大英博物館まではチューブに乗った。チューブとは地下鉄の愛称である。本当に、チューブのような形状のトンネルを、チューブのような形状の電車が走り回っている。実は、ロンドンの地下鉄は世界で最初にできたものだ。その時は、なんと蒸気機関車だったそうだ。目的地に着いたら全身が真っ黒になってしまったのではないだろうか。それはどうかわからないが、この蒸気機関車の地下鉄には夏目漱石も乗ったことがある。暗くて本が読めないし、煙が臭くて吐きそうだと、露骨に不快がっていたようだが。
 大英博物館は、予想以上に大きかった。とても一日やそこらで見学しきるものではない(計算では一秒で5~6点の展示品を見れば、一日で常設展示品15万点を制覇できる)。今度もしイギリスに来ることがあったら、三日ぐらいずっと大英博物館見学に当てよう、と決意するぐらい見ごたえがあった。パリのルーブル美術館も一日で見学するのは無理だと言われているようだ。だから、今後もしフランスに行くことがあったら……。なんて考え出したら切りがない。イギリスにもまた来たい。フランスにもスペインにもイタリアにも行きたい。しかし、費用と時間には限度がある。
 全部は見られないので、エジプト、ギリシャ、ローマの展示を中心に回ることにした。
 ところで、そもそも大英博物館とは何か。そう思われる方のために、まずは概略を説明してみたい。大英博物館(British Museum)は18世紀に開館した国立の博物館で、エジプト、ギリシャ、アジアなどの美術品や文化的資料を収蔵している。展示物のおおもとはハンス・スーロンの個人的収蔵品だというから驚きだ。
 この博物館の大きな特徴は、入場無料であることと、撮影自由であることだろう。陳列棚を見て歩くだけで楽しい気分にさせてくれる土産品の数々も魅力を倍加している。ロゼッタストーンのマグカップや猫の置物に、なんとミイラのチョコレートまである。それらについては、後でまたふれてみたい。
 大英博物館で人気の展示品は、ロゼッタストーン、ミイラ、パルテノン神殿の彫像など、たくさんあるが、まずはやはりエジプトの部屋に入ることにした。
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 世界の街角から(イギリス編)
◆ 執筆年 2014年4月26日
◆ 群馬県立太田高等学校『図書館だより』の「閑話 世界の街角」に 2012年2月から2014年3月まで連載した紀行文