世界の街角から
(イギリス編)
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ロンドン その4 大英博物館(前篇)
大英博物館で人気があるのは、何と言ってもエジプトの展示品だ。しかし、エジプトの展示室だけでも10室ぐらいある。とてもではないが、一つ一つゆっくり見て回る時間的な余裕はない。
そこで早速、目当ての黒猫を探すことにした。黒柳徹子がテレビで大英博物館の特集をしていて、黒猫がお供をしていたのだ。だから、日本人はみんなこの猫を見たがった。
まずは一階の展示室を見て回ったが、見つからなかった。ちなみにここにはロゼッタストーンがある。その周辺はものすごい人だかりだった。それなので、写真を撮るのはあきらめた。別の場所にはロゼッタストーンのレプリカがあり、それはガラスケースに覆われていず、自由に触ることができる。以前は本物のロゼッタストーンも触ることができたそうだ。
二階にもエジプトの展示室がある。そこにはミイラがあるので、猫もそっちなんじゃないかということになって、我々は二階に上がった。ミイラの中には、なんと猫のミイラもあり、猫のミイラがあるのなら黒猫の像があってもおかしくない、と推測したのだ。
二階のミイラも大英博物館の人気者なので、すごい人だかりだった。ぐるぐるに縛られたミイラや骨格も露わなミイラなど、いろいろあった。その多くはケースの中に収められている。ケースには美しい絵が描かれている。エジプトの絵というと、男性はボブカット、女性は姫カット、目はぱっちりと大きいアーモンド型。ケースにはそういうエジプト的な人(たぶん男性)の絵が等身大に描かれている。どのミイラもすごい人だかりで、ここでも写真を撮るのを断念した。猫のミイラの付近をうろうろしたが、やはり黒猫の像はない。しびれを切らした妻が係員にたずねた。「猫……黒い……日本のテレビ……。」これでわかった女性係員もすごいが、「OH!(何とかかんとか)」と言って、一階の展示室にあることを教えてくれた。ということで、私たちは再び一階のエジプトコーナーに舞い戻った。
あった! 鼻と耳にピアスをしているアビシニアンである。日本では当時テレビによく登場して人気急上昇中だったが、現地ではそれほどではなかった。従って、混み合ってなくて、撮影も容易であった。女神バステトを象徴するブロンズの像で、背中を真っ直ぐ伸ばして、行儀よく座っている。ピアスは高貴と神聖の表れだ。ちなみにこの猫は、寄贈者にちなんで「ゲイヤー・アンダーソンの猫」と呼ばれている。
猫騒ぎをしているうちに時間を浪費したので、先を急ぐことにして、ギリシャ・ローマのコーナーに向かった。そのため、もったいないことに、大英博物館にあるエジプトの像の中で最大の、ラムセス2世の胸像は見逃してしまった。あとで知ったことだが、ラムセス2世は、例の猫のすぐ近くにいたのである。