世界の街角から
(フランス編)

3
シャルトル②
ホテル「ティモテル シャルトル カテドラル」の小さな食堂で朝食をとる。パンやチーズ、ベーコン、イチゴジャムがおいしかった。イチゴジャムは、小さな小さなビンに入っていた。一人用の食べきりサイズのガラスビン、日本では私はまだ見たことがない。なかなか便利だと思った。集合時間の8時10分まで、あたりを妻と散策した。駅や記念碑や商店の写真をとりながら付近をひとまわりして、ホテルにもどるとロビーに人々が集まりだした。この町にはシャルトル大聖堂という世界遺産がある。1979年、フランスでもいち早く世界遺産に登録された聖地である。徒歩で移動を開始したとおもったら、もう到着した。そういえばホテルからもみえるほどの至近距離であった。
大聖堂の前で、ガイドを待つ。ガイドなしでは入場できないという。JTBの添乗員の芳野さんがいるではないか? とおもった方もいるかもしれない。私もそうおもったが、芳野さんはライセンスを持ったガイドが付き添わないと、団体客は寺院の中には入れないのだという。その理由についてはよく覚えていない。観光業を守るための法律がフランスやイタリアにはあるとか、そんな事情であったろう。芳野さんの先輩は、イタリアで逮捕され、罰金を払わされたそうだ。それも、建物や展示物の説明をしていたわけではなく、ただその日の日程説明をしていただけなのに、見逃してもらえなかったそうである。
「罰金は15万円でした」ときいたわれわれは、おもわず「えー!」といった。
とにかくガイドがやってくるまではどうしようもないので、われわれはシャルトル大聖堂の美しい外観を眺めたり、写真をとったりしていた。そのうちに、トイレや巡回バスにまで被写体としての魅力を感じるほどの精神状態になっていた。だが、なんらかのやむを得ない事情で時間に間に合わなかったガイドが登場すると、われわれの気分は割と簡単に持ち直した。それほど日本人ガイドのサユリさんは上手にわれわれを導いた。解説が上手だっただけでなく、愛嬌があり、サービス精神も豊富というような具合で、ガイドとしての美点が多かったようにおもう。この方を標準とするのは、このあとの行程で出会ったガイドたちには若干不利になったかもしれない。
シャルトルの大聖堂は、正確にはシャルトルのノートルダム大聖堂という。「ノートルダムってパリにあるんじゃないの?」とおもわれた方がいるかもしれないが、実はノートルダムを冠した聖堂はたくさん存在する。そもそも「ノートル」は「私たちの」、「ダム」は「貴婦人」という意味だから、「ノートルダム」は「私たちの貴婦人」ということになるが、さて「私たちの貴婦人」とはいったいだれのことか。この答えは来週のお楽しみ。