世界の街角から
(フランス編)

フランス旅行
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ロワール地方⑤

 前回、「バスに乗りこむと、もうモン・サン・ミッシェルに向かって走りだしていた」と書いたが、旅程表で確認すると、この日はロワールで宿泊し、翌日モン・サン・ミッシェルに向かったのであった。よく考えてみれば、朝シャルトルを見て、バスで150キロ走り、午後ロワールの古城巡りをして、さらに300キロ走って、モン・サン・ミッシェルを見学するなんて、できるはずないのである。
 夕食はツールにあるレストランである。ツールというのは、世界史で習う「ツール・ポワティエの戦い」のツールである。この歴史的に有名な都市は、ロワールにあるのだ。
 どんぶりぐらいの大きさの白いボールに、ミネストローネみたいな野菜スープがたっぷり入っている。けっこうおなかがいっぱいになった。メインのサーモンのホイル焼きが来る。ジャガイモとトマトもたっぷり乗っかっている。バターがおいしいせいか、まずまずの味だった。しかし、フランス料理に対する私のイメージとはだいぶ違っている。率直に言えば、普通の、しかも何となくもの足りない料理だった。
 「ホテル イン デザイン ツール ジロドー」に宿泊する。昨日より狭くて粗末だ。バスマットなし。シャンプーなし。冷蔵庫なし。ベッド小。ウォシュレットもちろんなし。これは、イギリスでもそうだったが、フランスのホテルには最低限の設備しかない。ツアーのグレードにもよるのだろうから、一概には言えないにしても、日本なら、地方のちょっとしたビジネスホテルでも、もっと設備が充実していて快適だよなあとため息が出るほどだ。それとも、日本のホテルが充実しすぎているのだろうか。とにかく、海外でいつも感じるのは、日本の快適さ、清潔さ、便利さ、スタッフの気配り。これらは日本の誇れるところだろう。日本の良き文化はずっと続いてほしいと思う。
 ついでに、フランスのトイレ事情を書いてみたい。少ない。イギリスやアメリカも少なかったが、フランスも少ない。あとで行くパリの有名な観光地、ルーブル美術館やヴェルサイユ宮殿なども少ない。ラファイエットという有名なデパートでさえ少ない。タカシマヤやイオンなら、ワンフロアーごとに複数あり、中もゆったりとして、清潔な空間だ。しかし、ラファイエットはワンフロアーごとに一つなかったし、あまりきれいではないし、しかもトイレの前には人がたくさん並んでいて、ひどい目にあった。女性用のトイレはもっと並んでいる。ラファイエットに限らず、女性用のトイレは、ルーブル美術館でもヴェルサイユでも長蛇の列であった。トイレに並んでいる間に、見学時間がなくなってしまうのではと心配になるぐらいだ。それから、話は違うが、フランスには有料のトイレがある。銭湯の番台のように、トイレの前に人が座っていて、勝手に入ろうとすると怒られる。五〇セント払わないと中に入れてもらえない。でも、有料なだけに、清掃も行き届いていて、逆に安心して使用することができる。どこへ行っても、快適なトイレを無料で使わせてもらえる日本。我々はこれを当たり前だと思っているが、ほんとうは感謝すべきことなのだ。
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 世界の街角から(フランス編)
◆ 執筆年 2017年12月17日
◆ 群馬県立太田高等学校『図書館だより』の「閑話 世界の街角」に 2014年10月から2017年7月まで連載した紀行文