世界の街角から
(フランス編)

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モン・サン・ミッシェル①
第3日目 2014年8月13日(水) モン・サン・ミッシェルに向かうバスの車窓から景色を眺める。見渡す限りの畑だ。麦、トウモロコシ、ブドウ、ひまわり……。畑でなければ、野の花が一面に咲いていたり、森が広がっていたりする。日本だと、店や工場がぽつぽつ田畑を食い荒らし、派手な看板が景観をぶち壊しているが、フランスではそういうことはない。多少、店や看板はあるが、ほとんど気にならない。
意外とひまわり畑が多い。ひまわり畑を見るためにわざわざスペインまで行かなくても、広大なひまわり畑をフランスで見ることができる。もちろんこれは花を鑑賞する目的に栽培しているのではない。ひまわり油をとるのである。
フランスは農業国だ。食料自給率200%である。酪農国でもある。フランスのバターはおいしい。乳脂肪分がたっぷり入っているのだ。法律で脂肪分の割合が定められていて、一定以上のパーセンテージ入ってないと「バター」と呼んではいけないそうだ。農業を保護するためのフランスの政策なのだと添乗員の芳野さんは言う(芳野さんは今日も元気に楽しい話をきかせてくれている)。そのバターで焼くから、バゲットやクロワッサン、パン・オ・ショコラなどがおいしい(パン・オ・ショコラはよく聞き取れなかったから、もしかしたら別のものかもしれないが、とにかくクロワッサンかブリオッシュみたいなものにチョコレートが入っているもののことである。とりあえずここでは仮にパン・オ・ショコラとしておく)。芳野さんはパン・オ・ショコラが好きだそうだ。日本で探してもなかなかないし、あっても高い、フランスのはさくさくしている、とのことだ。
バスの中で聞いた芳野さんの話がなかなか面白いので、それを書いていると、どうやら今回もモン・サン・ミッシェルには到着しそうもない。実際、モン・サン・ミッシェルはロワール地方から300キロも離れているので、少々時間がかかると思って、ご辛抱願いたい。なにしろ、まだバスはツール近郊を走っている。このあたりはフランスでも有数の果樹園地帯だそうだ。市内には市が立つという。芳野さんの話がフランスのフルーツ事情に移る。
フランスのイチゴは赤くて大きいが、すっぱい。リンゴも甘くないし、日本のリンゴのように蜜も入っていない。だから、イチゴはそのまま食べないで、チョコレートをかけたりジャムにしたりする。リンゴはジュレにする(そういえばこのリンゴのジュレは、朝、ホテルで食べたなあと思う。栗きんとんのリンゴ版という感じで、甘くてなかなかおいしかった)。フランスのフルーツは安いが甘くない。日本のはおいしいが高い。なぜかというと、日本では品種改良して糖度を高くしているからである。その分お金がかかるというわけだ。しかし、過保護に育つから病害虫に弱い。なんだか日本のフルーツと日本人って似ているなあ。