世界の街角から
(フランス編)

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パリ①
ジベルニーのモネの家を堪能し、戦場のような土産物屋で、たくさんのモネの絵の絵葉書を買い込んで、外へ出る。幸い雨は上がっていた。バスの駐車場に向けて歩き出す。また、雨が降り出した。雨が降ったりやんだり、フランスは天気がころころ変わる。私が来たのに合わせてお天道様が意地悪をしているのか、それともいつも意地悪なのかは知らないが、傘を畳んだり、開いたり、忙しいこときわまりない。路地裏から表通りに出て、左に曲がってしばらく歩いた。見覚えがなかった。引き返して、さっき曲がった地点で立ち止まり、きょろきょろしてからまっすぐ歩いて行くと、覚えのある景色が出てきた。ほどなくバスのある駐車場に来た。バスが走り出した。いよいよパリである。夕食もパリである。バスがパリに着いた。シャンゼリゼにバスが停まり、みな大急ぎで降りる。パリのレストランに入る。パリの料理を食卓で待っていると、前菜が運ばれてきた。ニンジンの千切りみたいのがたくさん盛ってある。食感はいまいちだが味付けはよい。赤ワインもうまい。パリにきたら、食事がおいしくなった。前菜が食べおわるころ、私の前に牛肉のシチューが置かれた。妻の前には魚のカツレツがきた。牛肉の付け合わせはフライドポテトであった。魚の付け合わせはライスであった。妻はこのライスの付け合わせというのを好まなかった。しかし、どうやらフランス人はライスを付け合わせとして食べる習慣があるようで、いろいろな料理の皿に盛り付けられる。ポテトかパスタの代わりなのだろう。この旅行でもこれまでにすでに三回これが出たのであった。ぱさぱさしているためか、我々ツアー一行にはすこぶる不評であった。ところが私はこれが割と好きなのだ。フランスに来て、ごはんを主食に肉や魚のおかずを食べる気分になれるからだった。何度も言うが、実際はこのライスは主食でもなんでもない。毎食必ずフランスパンの切ったのがたっぷり出されるのである。しかし、私はこれがあるときはパンにはあまり手をださず、もっぱらごはんだった。
というわけで、私は妻の皿と交換した。妻は悪そうにしたが、私は喜んだ。牛肉を見たら、見ただけでいっぱいになってしまい、さっぱり魚とさっぱりライスで、さっぱり夕食を済ませたかったのだ。
それにしてもこのライス、フランス人の通常食として定着しているのだろうか。わざわざ日本人向けにそうしてくれたとも思えない。実はあとでルーブル美術館のフードコートでコーラを飲んだのだが、そこのビュッフェに並んでいる数々の料理のなかにもこれがあった。それを欧米人が付け合わせとして自分のプレートにたっぷりよそっていた。そんなことからも、お米はサラダの一種としてフランスでも一般的な食品であるようだ。
ところで、白身魚のカツレツはうまかった。イギリス名物のフィッシュ・アンド・チップスのような感じだった。