世界の街角から
(フランス編)

フランス旅行
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パリ③

 だいたいにおいてこのツアーは、朝が早くて夜は遅いのだが、今日も例外ではなかった。旅行社のツアーは、かなり強行日程なので、年配者にはきついかもしれない。ゆったりプランみたいなのに申し込めばいいのだろうが、そうすると今度は予算的にきつくなる。
 バス発車時に、佐々木さんというパリ在住の日本人女性のガイドが同乗する。今回の旅行で四人目のガイドである。
 一人目は、シャルトルの大聖堂を案内してくれたクイズ好きのサユリさんという日本人女性。二人目は、本稿では登場しなかったが、モン・サン・ミッシェルを案内してくれたフランス人(?)女性。三人目も本稿では登場しなかったが、ルーアンを案内してくれた日本人女性。そして、パリの佐々木さんである。
 佐々木さんは発音のきれいなフランス語を話す。日本語もとてもきちんとしている。ピンクの柄物のスカートに、水色のつるっとした感じの短いコートが、いかにもパリジェンヌという感じである。
 トロカデロで短時間バスを降りる。エッフェル塔がよく見えるスポットがあるのだそうだ。確かによく見える。みんな夢中で写真を撮りまくる。私も撮った。
 次に、凱旋門に向かう。ここはバスのなかから見るだけ。その次はシャンゼリゼ。ここもバスからの眺めのみ。続いてコンコルド広場。やっぱりバスからの景色オンリーであった。
 日程表では、午前のパリ市内観光は、ルーブル美術館、エッフェル塔、凱旋門、シャンゼリゼ、コンコルドとなっていると前回書いたが、実態はこんな感じであった。もっとも午前中にすべてをきちんと見学することなど、今のパリ観光においては全く不可能であろう。パリは観光客が激増しており、したがって、ルーブル、エッフェル塔、凱旋門は大混雑しており、場合によると2時間も3時間も待たなければ入場すらかなわないのである。旅行社がチケットを取ってくれている今回のツアーであれば、確かに入場までは速やかであろう。しかし、極端に言えば元日の浅草寺参道のように混みあった場内を歩き回るのに、とんでもない時間を消費させられる。だから、ルーブル以外はバスで実物だけ確認しておくというのが、とにもかくにも午前中に全部見たという形にする場合の唯一の手段であろう。ルーブル以外もちゃんと見学したければ、明日の自由行動でするしかない。もっともエッフェル塔、凱旋門、シャンゼリゼ、コンコルドを見学するだけでおそらく一日は終わってしまい、さらにどこかというわけにはいかないだろうが。
 私の旅行した2014年の夏はこんな感じであった。佐々木さんも、彼女自身が学生のとき初めてフランスに来たときと比べると、観光客の数が激増していると言っていた。
 その後、テロが起きて、フランス事情も大きく変化した。2016年現在、パリの観光客数はどうなのだろう。減ったのか。それともそんなに変わらないのだろうか。
 さて、バスはルーブルに着いた。
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 世界の街角から(フランス編)
◆ 執筆年 2017年12月17日
◆ 群馬県立太田高等学校『図書館だより』の「閑話 世界の街角」に 2014年10月から2017年7月まで連載した紀行文