世界の街角から
(フランス編)

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再びパリへ②
パリ・メトロ1号線テュイルリー駅は、モンブラン発祥の店アンジェリーナから歩いて1分、テュイルリー庭園の中間点に位置している。テュイルリー庭園はテュイルリー宮殿の跡地である。宮殿がパリ・コミューンで消失し、庭園だけ残った。フランス革命のとき、ルイ16世とマリー・アントワネットは、ヴェルサイユ宮殿からテュイルリー宮殿に連れ戻された。さらに革命の熱が高まると、ルイ16世とマリー・アントワネットはテュイルリー宮殿からタンプル塔に移された。そして、処刑された。ルイ16世とマリー・アントワネットの処刑を決めたのは、世界最初の普通選挙で選出された国民公会の議員たちだった。歴史に思いを馳せながら地下鉄に乗っていると、もうクリュニー・ラ・ソルボンヌ駅が近づいてきた。実際にはメトロ1号線からメトロ4号線、メトロ4号線からメトロ10号線へと慌ただしく乗り換えているので、あまりぼんやりしている暇はなかったが。
目的は中世美術館であった。リルケの『マルテの手記』を読んで、どうしても訪れてみたいと思った場所だ。しかし、期待していたほどのものではなかった。せっかくフランスに来たのだから、もっと有名な観光地に行けばよかったと思えて仕方がない。ノートルダムの近くだったのだから、素直にノートルダムに行けばよかった。悔しいので、『マルテの手記』に出てきたサン・ジャック通りを歩いてみた。古本屋の隣の八百屋から白猫が歩いてきた。しっぽを立てて寄ってくる。ますます『マルテの手記』である。よもや古本屋から出てきたのではあるまい。しっぽに本の背表紙のタイトルを消す機能があるかどうか確かめようと、近寄ったら、逃げて行った。
サン・ジャック通りを歩いていくと、セーヌ川に架かる橋まで来た。橋の上からノートルダムを見る。渡ってもう一度見る。欧米人紳士が大きな一眼レフを持って話し掛けてくる。彼に請われるまま写真を3枚撮ってあげた。彼は思い通りのポーズで写った。一眼レフを返すと非常に喜んでいた。しばらく行くと、別の紳士が寄ってきた。ジャケットを着て帽子をかぶり、身なりがとてもよい。パンフレットを渡そうとするが断った。すたすた歩いてレストランの店先のメニューの前で立ち止まると、さっきの紳士がまた寄ってきた。どうにか紳士を振り切りメトロの駅に向かって階段を降りた。メトロに乗った。オペラ座に着いた。日本食街がある。寿司屋を見たら食べたくなったので、中に入ってみた。寿司のパック詰めが13.5ユーロだった。味はまあまあだった。イギリスやアメリカで食べた寿司よりはうまい。店を出て、ラファイエットでウィンドーショッピングをする。食品館が面白かった。ワイン、チーズ、肉、ハム、コーヒー、香辛料、チョコ。いろいろある。香辛料は山盛りになって、量り売りをしていた。