世界の街角から
(アメリカ編)

アメリカ旅行
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ザイオン②

 前回では、ラスベガス(ネバダ州)=館林市(群馬県)、ザイオン(ユタ州)=小山市(栃木県)、アンテロープ(アリゾナ州)=筑西市(茨城県)、モニュメントバレー(ユタ州)=益子市(栃木県)、グランドキャニオン(アリゾナ州)=筑波山(茨城県)、という、きわめて乱暴、かつ、ふざけた、しかしながら、(東毛近辺在住者にとっては)不思議なくらいに簡潔かつ明快な図式によって、ラスベガス界隈の絶景スポットを位置づけてみた。
 我々JTBツアー一行は、ザイオン→アンテロープ→モニュメントバレー→グランドキャニオンの順に大自然めぐりに出かけたのである。州名で言うと、ユタ州→アリゾナ州→ユタ州→アリゾナ州、の旅であるが、それはまた、引き合いにした北関東の地名を用いるならば、小山→筑西→益子→筑波山、の旅である。それにしても、こんな言い方にすると、壮大なアメリカ大自然旅行が、急になじみ深い土地への小旅行めき、妙な気分になるものだ。
 館林から小山までは遠かった。(もちろんラスベガスからザイオンまでのバス旅行のことである。)フリーウェイ15号をひたすら250キロ以上、時間にして3時間ぐらいかかるのである。
 さて、ここらで少しだけ時間を戻すことを許していただきたい。アメリカ西部の大自然の位置関係を把握するのに若干の説明が必要と思い、それを先にしたのだが、これからザイオンまでのバス旅行をたどるならば、やはりもう一度ラスベガスのホテル「モンテカルロ」から始めるのがよかろうと思うのである。
 モンテカルロのスウィート(「ラスベガス①」にも書いたが、我々ツアー一行は全員スウィートに泊まっている。もちろんお金があるからではなく、まあ、いわば、これがラスベガス流なのである)で起床した私たちは、各自自由に朝食をとった。私と妻、義母、妻の妹の4人は、バスでホテル「パリス」に行き、パリスの中にある「ル・ビレッジ」というレストランのビュッフェで朝食をしたためた。るるぶにあったとおり、このレストランはおいしかった。いまのところ、おいしいと思ったのは、「フーターズ」のレストランとここの二箇所である。
 朝食後モンテカルロに戻り、バスに乗り込む。添乗員がアメリカ人の男性に変わった。それまでは日本人女性だったが、ザイオンからグランドキャニオンまで周遊する観光バス内はこのアメリカ人男性が案内してくれる。日本語が上手な若い白人だった。愛嬌がよいが、日本人の感覚からすると少ししゃべりすぎるように感じた。
 出発前に、バスのトランクに荷物と弁当を積んだ。和食の弁当を用意したという。
 添乗員は明るく楽しく一行を盛り上げようとしてくれた。ただ、日本人はバスの中であまり盛り上がったりはしないので、彼は少しやりづらそうであった。これは、イギリスでも同様だったが、日本人の観光客はバスの中でしーんと静まり返っているのである。その静かな車内に添乗員の話だけが鳴り響くのである。
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【--- 作品情報 ---】
◆ 題名 世界の街角から(アメリカ編)
◆ 執筆年 2020年1月10日
◆ 群馬県立太田高等学校『図書館だより』の「閑話 世界の街角」に 2017年9月から2020年1月まで連載した紀行文である。
 ただし2019年10月から2020年1月までは諸事情により図書館のコーナー掲示となった。